榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

著者の歌謡曲と歌手に対する熱い思いが籠もった一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2418)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年11月30日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2418)

ヨシガモ(写真1~5)の雄、雌、ヒヨドリ(写真6)をカメラに収めました。

閑話休題、『我が愛しの歌謡曲――昭和・平成・令和のヒット・パレード』(吉川潮著、ワニブックスPLUS新書)には、著者の歌謡曲と歌手に対する熱い思いが籠もっています。

●江利チエミ――
「(昭和)34年に東映の若手俳優、高倉健に見初められて結婚。高倉28歳、チエミ22歳の年である。熱々の夫婦仲だったが、39年に異父姉のと志子が突然訪ねてきたことで運命が変わる。と志子に母の面影を見出したチエミは、同居させて金銭の管理を任せた。ところが、と志子は最初から幸せな妹に嫉妬して騙すつもりだったようで、46年に預金、貴金属などを持ち逃げしたばかりか、多額の借金を残して失踪した。借金返済を高倉がかぶらないように、自ら離婚を申し出て、夫婦は愛し合いながら別れた。42年に出した『ひとり泣く夜のワルツ』という歌は、当時のチエミの心境を歌ったものだ。題名から察していただきたい」。離婚せずに、二人で頑張ればよかったのにと、返す返すも悔やまれます。

●井上陽水――
「(昭和)48年には、ニューミュージックの名曲として今も伝わる『夢の中へ』と『心もよう』が大ヒット、一流のシンガーソングライターとして認知された。この2曲もいいですなあ。私は歌詞を見なくても歌える。50年代に入ると、次々に傑作が出来た。官能的な『ジェラシー』、前奏を聴いただけで体が動き出す『リバーサイドホテル』、それに『いっそセレナーデ』だ。・・・オリジナル曲、他の歌手に提供した楽曲、昭和の名曲のカバーと、3拍子揃ったことで、陽水の才気が尋常ではないことが証明されたわけである」。書斎で井上陽水のCDを聴きながらの読書――私の至福の時です。

●山口百恵――
「なんという潔さであろうか。芸能プロダクション、レコード会社、テレビ局、ラジオ局、出版社、多くの関係者が、金の卵を産む歌手を失ってさぞかしがっかりしたことだろう。・・・引退後、一切マスコミに姿を見せないことにも彼女の潔さを感じる。・・・芸能人としてだけでなく、妻として、母親として幸せな人生を送ったのは、芯の強さがあったからだと私は思っている」。山口百恵は私の最も好きな歌手の一人だが、その出処進退の鮮やかさは尊敬に値します。