戦争と平和を巡る半藤一利の対談集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2506)】
ホオジロ(写真1~3)、ツグミ(写真4)をカメラに収めました。ピンクネコヤナギ(フリソデヤナギ。写真5)の花穂が目を惹きます。ハクモクレン(写真6)が蕾を付けています。
閑話休題、『半藤一利 語りつくした戦争と平和』(保阪正康監修、東京新聞)は、戦争と平和を巡る半藤一利の対談集です。
半藤は、「大事なことはすべて昭和史に書いてある」と、昭和史から学ぶべき5つの教訓を挙げています。
①国民的熱狂をつくってはいけない、そのためにも言論の自由・出版の自由こそが生命である、
②最大の危機において日本人は抽象的な観念論を好む。それを警戒せよ。すなわちリアリズムに徹せよ。
③日本型タコツボにおけるエリート小集団主義(例・旧日本陸軍参謀本部作戦課)の弊害を常に心せよ。
④国際的常識の欠如に絶えず気を配るべし。
⑤すぐに成果を求める短兵急な発想をやめよ。ロングレンジのものの見方を心がけよ。
興味深いことが語られています。
●(広田弘毅は)二・二六事件後に首相になり、軍の要求を数多く受け入れてしまった。城山三郎さんの小説「落日燃ゆ」は、彼を美化しすぎていると感じます。
●後藤田(正晴)さんは「新しい歴史教科書をつくる会」に徹底的に反対していて、夜になるとその影響を受けたような人から、脅迫電話がかかってくると言ってましたね。そういう連中のことを「いまだに歴史そのものをきちんと見てないんだなあ」と述懐していました。
●軍隊持つと金がかかる――太平洋戦争前の日本の軍事費は、昭和14,15、16年と国家予算の半分以上を占めたんです。それで国民に耐乏を強いた、今の政府は僕たちの生活を維持しながら、強大な軍隊を持って国際社会と渡り合おうと思ってるんでしょ。そんなのできっこない。だからお金のことは、何も言わないんですよ。
●陸軍は昭和天皇を軽んじていますね。昭和天皇は「天皇機関説」をかなり認めており、それが陸軍の耳に入っている。私の推論だが、陸軍の勝手な解釈は、天皇が機関ならオーナー会社みたいなもので、社長を代えるのは差し支えない、気にくわない社長は代えた方がいいと考えたのではないか、と。(昭和天皇)実録を読むと、かなり陸軍内にそういう考え方があったのではないか。
●(玉音放送は)私はよく聞こえましたね。「堪ヘ難キヲ堪ヘ」や「万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス」くらいは聞こえ、瞬間、日本は負けて戦争は終わったというのは分かりました。大人たちに「負けたら男は全部奴隷になって連れて行かれ、女は米兵などの妾になる」と聞かされてたんで、これで俺たちの人生終わりだ、人生の楽しみは早いとこ味わっておこうと思って、生まれて初めてたばこを吸ったんです。でもおやじが「バカモン」と。「奴隷にして全員連れて行く? どれくらいの船がいると思うんだ」「妾にしたらアメリカの女の人が許すはずないじゃないか」と。ハッと目が覚めました。