夫を毒殺し、金持ちの西門慶の第五夫人に納まった潘金蓮の運命や如何に・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2538)】
ソメイヨシノ(写真1~8、9の左)、ジンダイアケボノ(写真9の右、10~13)が咲いています。遅蒔きながら、我が家のモクレン(シモクレン。写真14)が咲き始めました。庭の片隅では、チューリップ(写真15)が咲き始めました。
閑話休題、『金瓶梅』(笑笑生著、小野忍・千田九一訳、岩波文庫、全10冊)は、富裕で好色な薬屋・西門慶と、その妻、妾たちを中心に、明代後期の社会と人間を生々しく反映させた長篇小説です。
「これからこの書物で申し上げるのは、ひとりの性悪な美女が引き出す艶物語、淫乱な女が無頼の男と通じて、日ごとに歓びを追い朝な夕な恋い慕ったため、やがてしかばねを刃の下に横たえ、命を黄泉に染め、未来永劫、綺羅を着ることもかなわず、べにおしろいをつけることもできなくなるというお話」と始まります。
訳者の小野忍は、「正妻呉月娘は賢夫人型、芸者あがりの第二夫人李嬌児は打算型、第三夫人孟玉楼は善人型、小間使いあがりの第四夫人孫雪娥は破滅型、第五夫人潘金蓮は淫婦型、兼じゃじゃ馬型、第六夫人李瓶児は純情型、ということになる」と記しています。
数ある妻妾の中で、とりわけ興味深いのは、何と言っても潘金蓮です。風采の上がらぬ夫を嫌って西門慶と浮気をしただけでなく、夫を毒殺してしまいます。
「その場でふたり(慶と金蓮)は着物をぬぎ、帯をとき、枕を交わしたわけです」。「心とろかすやわ肌の、色はほんのりさくら色、もすそは裾長翡翠色、袖はうすぎぬ金模様。髷が斜めに傾けば、天女嫦娥の美しさ。千両出しても買えやせぬ」。
「やがて女は着物をぬぐ。西門慶、とびらをさぐるに、にこ毛もなく、白馥馥、鼓蓬蓬、軟濃濃、紅縐縐、緊□□(□は糸偏に秋)として、これなん千人の愛し、万人の貪る、いっこうにえたいの知れぬもの」。
「やがて、酒もかなりまわったので、ふたりは部屋の戸をしめると、帯をといて、床に上がりました。・・・部屋の中では西門慶と金蓮、鸞と鳳とが身をひるがえすがごとく、魚の水におけるがごとく、すっかり楽しみに夢中でした。この女の枕の味のこまやかなこと、色街の女よりもはるかにひいで、まことに至れりつくせりのとりもち、西門慶もまた、得意の槍先にものをいわせます。女の色香、男の腕、ともに今が盛りというところ」。
「その晩のふたりはまるで気ちがい紙鳶のごとく、根かぎりたわむれぬき、はかり知れない淫欲のほどを示しました」。
「さて、この先はどうなるか、それはお次の回で」。
『金瓶梅』は、中国の四大奇書に数えられるだけあって、単なるポルノグラフィではないことが、よ~く分かりました。