榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

徳川家基、後桃園天皇、田沼意知を暗殺した黒幕は、徳川家斉の父・一橋治済だった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2565)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年4月26日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2565)

埼玉・春日部の「ふじ通り」は、さまざまなフジの芳香に包まれています。

閑話休題、『田沼意次 百年早い開国計画――海外文書から浮上する新事実』(秦新二・竹之下誠一著、文藝春秋企画出版部)には、驚くことが書かれています。

国内外の史料を綿密に調査した結果に基づき、徳川家基、後桃園天皇、田沼意知を暗殺した黒幕は、御三卿一橋家当主の一橋治済(はるさだ)だと告発しているのです。

著者の主張を、私なりに整理すると、こうなります。

●田沼意次は、8代将軍・徳川吉宗の存命中から開国計画を推進するよう指示されていた。

●保守派の一橋治済は、10代将軍・徳川家治の跡をその世子・徳川家基が継いだら、家基・意次コンビにより開国が実現してしまうと危機感を抱き、家基を暗殺した(享年18)。

●治済は、次期将軍の有資格者である田安定信を強引に白河藩松平家に養子(松平定信)に出し、将軍になるチャンスは不可能に近かった自分の長男・家斉を11代将軍に就けた。

●徳川家康、吉宗のように大御所になりたかった治済は、自分の縁戚の光格天皇を即位させるべく、後桃園天皇を暗殺した(享年22)。

●治済は、自分が必要なときは意次、島津重豪と手を結びながら、用が済めばお払い箱とした。

●治済は、意次の力を削ぐため、意次の長男、若年寄の田沼意知を暗殺した(享年36)。

●一橋家は、家斉以降、14代将軍・徳川家茂(家斉の七男が実父)まで将軍職を独占した。

治済が大策謀家であることは井沢元彦の著書などで知っていたが、ここまで大仕掛けの謀略を巡らし、実行していたとは! 著者の論考が説得力十分なだけに、強い衝撃を受けました。