本書のおかげで、大好きな曹操の詩をじっくりと味わうことができました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2587)】
ベニバナトチノキ(写真1、2)が咲いています。我が家の庭では、サツキ(写真10)が咲いています。因みに、本日の歩数は11,929でした。
閑話休題、『三国志』では曹操が私の一番好きな人物です。『曹操・曹丕・曹植詩文選』(川合康三編訳、岩波文庫)のおかげで、曹操の詩をじっくりと味わうことができました。「曹操の詩には人生のはかなさ、空しさを自分の意志の力によって乗り越えようとする力強い響きがこもっています。それはいかにも一代の英傑にふさわしく思われます。しかし死に臨んで遺した『遺令』では、自分の亡きあとの事を細々と案じる、およそ英雄らしからぬ、しかし実に人間的な、柔らかでか弱い心が露呈しています」。
例えば、「歩出夏門行」は、このように訳されています。「神亀 寿なりと雖も 猶お竟くる時有り 騰蛇 霧に乗るも 終には土灰と為る 老驥 櫪に伏するも 志は千里に在り 烈士の暮年 壮心 已まず 盈縮の期は 但だ天に在るのみならず 養怡の福 永年を得可し 幸甚 至れる哉 歌いて以て志を詠ぜん (めでたき亀は長命とはいえ、命の尽きる時は来る。天翔る龍は霧の乗るとも、ついには土塊に帰す。老いたる名馬は厩に伏す身になろうとも、その意気は千里を駆け巡る。老境を迎えた丈夫の、猛き心は衰えない。命の長短は、天が決めるだけではない。身と心を磨けば、長寿も引き寄せられよう。めでたやな、歌って思いを詠じよう)」。
「『歩出夏門行』の古辞は命のはかなさから昇仙することによって寿命の有限を免れたい思いをうたう。しかし曹操は求仙に向かうことなく、人間の力を信じ、身体と精神を自分の意思で養うことによって人の宿命を乗り越えようとする。建安以前の楽府や『古詩十九首』に流れていた悲観の情調を一変、無常観を超えて生を肯定する曹操らしさが端的にあらわれている。晋の王敦は酔うたびに『老驥 櫪に伏す』以下の四句を愛唱したというように、生きる意欲を駆り立てる作である」。