榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

自分も漢代の人間になったかのような錯覚に囚われてしまいました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2602)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年6月1日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2602)

さまざまな色合いのタチアオイ(写真1~5、8~13)を撮影していた時、ラミーカミキリ(写真6、7)を見つけました。タチアオイの根元の草取りをしている女性に話しかけたところ、「この通りをタチアオイ・ロードと呼ぶ人もいるんですよ。これが種を蒔いて2年目のタチアオイ(写真14)です。ホオズキ(写真15)の花も咲いていますよ」と笑顔で教えてくれました。植物を愛する人(増田さん)との会話は心が和みます。

閑話休題、『古代中国の日常生活――24の仕事と生活でたどる1日』(荘奕傑著、原書房)では、漢代の庶民の生活ぶりが生き生きと描き出されています。最新の考古学研究から得られた知見と、従来の歴史資料の研究成果を組み合わせて記述されているため、説得力があります。

例えば、15:00~16:00の「農夫がひと休みする」は、こんなふうです。「今日はもう十分働いて汗だくになっていたので、妻と子供たちがやってきて、犂で作ったばかりの溝を壊さないよう注意しながら近づいてくるのが見えると、ちょっとホッとした。妻は幼い息子が落ちないよう腰に抱いて、肩に鍬を担ぎ、鍬の片端には籠を、反対側の端には首を紐で結わえた壺をぶら下げている。娘は別の壺を運んでいて、親子4人は、畑の境界を示す木立の長く伸びた影に座って弁当を広げることにした。娘は父親に粥と野菜を差し出し、妻は籠から塩漬けの魚と餅(パン)を取り出した。妻は準備をしながら、村で奇妙なものを見たと話し始めた。村人が作物を乾燥させている村一番の広場で、お役所の役人が毛布を敷いて座っていたという。『とてもおかしかったわ。だって、上等なお茶を飲みながら、立派な服がだんだんと籾殻だらけになっていくんですもの』と、妻はクスクス笑いながら言った。許は、おかしいとは少しも思わなかった。定期的にやって来る役人と言えば徴税吏しかいないが、税はこの前集めていったばかりだ。別の考えが、うたぐり深い彼の頭にすぐに浮かんだ――そいつは土地査定官に違いない。氾濫原の農夫たちがどんどん収量を増やしてきた結果、とうとう地元の役所の注意を引くまでになり、ついに人を送り込んで、誰がどの土地を耕しているかを調べ、それぞれの農民が所有権を主張する土地の正確な広さを鑑定しようとしているらしい。土地査定官が民衆から嫌われているという言い方は、控えめもいいところで、実際、査定結果を受け取った農民たちが激怒して暴動を起こすこともあった。腐敗した査定官なら、農民から税をもっと搾り取れるよう農地の面積を大幅に誇張するし、きちょうめんな査定官でさえ、測量する土地はできるだけ広く測ろうとする。おそらく民衆の不満を静めるためだろう、しばらく前に地元当局は、熱心すぎて測量結果が実態とかけ離れていた査定官1名を処刑していた」。

続いて、19:00~20:00は「后妃付きの女官が苦悩する」、20:00~21:00は「史官が判断を下す」、21:00~22:00は「舞人が踊りを終える」、22:00~23:00は「王女付きの女官が風呂の準備をする」、23:00~24:00は「兵士が死と戦う」様が描写されています。

自分も漢代の人間になったかのような錯覚に囚われてしまいました。