榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

絶滅動物たちの写真記録の世界へようこそ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2610)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年6月9日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2610)

東京・文京の小石川後楽園では、スイレン(写真1、3~5)が咲いています。不鮮明だが、獲物を捕らえ岩に飛び移った瞬間のカワセミの雄(写真6)、獲物を狙うアオサギ(写真7)をカメラに収めました。

閑話休題、『写真に残された絶滅動物たち最後の記録』(エロル・フラー著、鴨志田恵訳、エクスナレッジ)には、貴重な写真が多数収められています。「この世から永遠に姿を消してしまった生き物に思いをはせ、失われた過去をよみがえらせつつ未来に向けて警鐘を鳴らす・・・。そんな絶滅動物たちの写真記録の世界へようこそ」。

とりわけ興味深いのは、フクロオオカミ、リョコウバト、バライロガモです。

●フクロオオカミ――居なくなってから珍しさに気づいたオオカミのような有袋類
「フクロオオカミは、世界で最もよく知られた幻の動物にひとつです。今でもオーストラリアの南東沖、タスマニア島の奥地で、人知れず生息しているのでしょうか。それとも、学術的な記録の示す通り、1936年9月7日にホバート(タスマニア州の州都)のボーマリス動物園で死んだ個体が、最後のフクロオオカミだったのでしょうか。・・・フクロオオカミのような大型の肉食動物は、ヒツジ農家を営む人びとからは危険な存在とみなされ、じきに攻撃対象となるのは明らかでした。そして実際に駆除が始まりました。19世紀には政府、企業、または個人により、フクロオオカミを殺した者には懸賞金が支払われたのです」。写真は、1933年12月19日にボーマリス動物園で撮影された雄のフクロオオカミです。

●リョコウバト――「的」にされて100年で滅んだ週十億のハト
「リョコウバトの物語はあまりにも衝撃的なので、よく語り継がれており、数ある絶滅記の中でもこの鳥の話に並ぶものはありません。流線形の体を持ち、速いスピードで飛ぶこのハトは、19世紀初頭では、おそらく世界中で最も数の多い鳥でした。とにかく驚異的な個体数が存在したのです。それが19世紀の終わりには、ほとんどゼロになります。野生のリョコウバトの最後の1羽は、1900年3月に、米国オハイオ州パイクカウンティで1人の少年によって撃ち殺されたとされています。・・・いったい何が原因で、こうも急速に、こうも劇的に衰退してしまったのでしょう? 簡潔に言ってしまうと、その理由はわかっていません――少なくとも完全には。悲劇を招いた主な要因がハトの乱獲だったことは確かですが、それ以外の要素は今も謎のままです」。

●バライロガモ――永遠に見ることのできないバラ色
「ピンクは、鳥の色としては非常に珍しい色です。頭から首にかけて鮮やかなバラ色をしたバライロガモ。・・・なぜこのカモが絶滅したのかは、わかっていません。狩猟の行き過ぎがあったとしても、決定的な要因になるほど深刻ではなかったようです。しかも個体数が減少していった時期には、まだ人の手の及ばない広大な自然が各地に残っていたのです。バライロガモは、ベンガル地域だけでなく、インド北東部のアッサム地方やビルマの一部にも生息していました。それなのに、このように急激に個体数が減ってしまった背景には、全く知られていない何らかの要因が存在したはずです」。