鳥のあれこれについて勉強になりました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(928)】
散策中に、ムベの紫色の実、落果したカリンの薄黄色の実、落果したラクウショウの薄青色の実、イチゴノキの薄赤色の実、ピラカンサ(トキワサンザシ)の赤色ならびに橙色の実、ナンテンの赤色の実、センリョウの赤色の実、観賞用トウガラシの黒色の実を見かけました。因みに、本日の歩数は10,510でした。
閑話休題、『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』(川上和人著、新潮社)は、内容が興味深いだけでなく、いろいろと勉強になりました。
鳥類図鑑でダイサギを見ると、「亜種ダイサギ」と「亜種チュウダイサギ」が掲載されています。この「亜種」について、本書の「最近ウグイスが気にくわない」とう節で分かり易く説明されています。「ウグイスは、日本人のソウルバードである。北海道から花札まで広く分布し、ホーホケキョと親しまれている。・・・日本で見られるウグイスは6亜種に分けられている。本土部で繁殖するウグイスは、その亜種名もずばり『ウグイス』と呼ばれる代表的存在だ。種名と混同しないよう、亜種ウグイスと呼ぼう。彼らは北海道から鹿児島まで広く分布する亜種なので、この名を冠するのも当然と言えよう。春に我こそはと偉そうにさえずっているのは、代表選抜に裏打ちされた自信の表れだ。対して、小笠原諸島のウグイスは亜種ハシナガウグイスと名付けられている。・・・実はウグイスの基亜種たるケティア・ディフォネ・ディフォネの名を持つのは、ハシナガウグイスである。その欺瞞に満ちた亜種和名と分布の広さから、亜種ウグイスがウグイス界の中心であるかのように見えるだろうが、その学名はケティア・ディフォネ・カンタンス、基亜種ではない。つまり、ウグイスという種は基亜種であるハシナガウグイスをもって定義され、亜種ウグイスがウグイスとしての学名を名乗れるのは、ハシナガウグイスと近縁だからと言える。そう、ウグイスの中心は小笠原にある。学名と和名で立場が逆転しているのだ。・・・基亜種に敬意を払わずふんぞり返る亜種ウグイスの姿に耐えられず、基亜種の代弁者となり真実を吐露した次第である」。おかげで、「亜種」と「基亜種」の関係が、よ~く分かりました。
「赤い頭の秘密」の節も勉強になります。「小笠原諸島には『アカポッポ』という鳥がいる。これは2008年に付けられた愛称で、本名はアカガシラカラスバトという。・・・漆黒の体と虹色に輝く頭を持つ美しいハトだ。・・・(天敵のネコが排除されたため)いつしか彼らは集落にも出現するようになり、多くの島民の目にとまり始める。幻の鳥が、現実の世界に舞い戻ってきたのだ。・・・さて、その名の通りアカガシラカラスバトの頭は赤い。ではなぜ赤いのかという疑問は、至極尤もなものだ。・・・小笠原に視線を戻すと、オガサワラカラスバトという別のカラスバトの分布記録があることに気付く。この鳥は、アカポッポと近縁のやはり全身が黒いハトだった。・・・同所的に形態が似た種がいる場合、お互いを識別する特徴が進化しやすい。アカポッポの頭が赤いのは、オガサワラカラスバトと形態的な差別化をするために進化した帰結と考えると、実に合理的である。・・・実を言うと、オガサワラカラスバトは19世紀に絶滅し、本当に幻になってしまった鳥だ。おそらくネコやネズミなど外来捕食者の影響だろう。しかしこの絶滅種がいなければ、アカポッポはただの頭の黒いカラスポッポだったかもしれない」。その写真を見ると、頭部は思ったほど赤くないが、美しいハトであることは確かです。
鳥の排泄物について、目から鱗が落ちました。「鳥の排泄物には、白っぽい部分と黒っぽい部分がある。この白色部分が尿で黒色部分が糞である。どちらも所詮は排泄物と侮ってはいけない。糞と尿の生成過程には、カッパとカワナガレほどの違いがあるのだ」。私は白いのは鳥の糞だと思い込んでいたので、恥をかかずに済んで、ホッとしているところです。
外来種の代表としてガビチョウが取り上げられています。「ガビチョウは全身茶色く、目の周りに勾玉のような白い模様がある『面眉鳥』の名にふさわしい大陸アジア原産の鳥だ。彼らは原産地では(その鳴き声のため)人気のある飼い鳥である。・・・(日本では)故意か事故かは不明だが彼らは飼育下から逸出し、1980年代から関東、九州、東北などで同時発生的に野生化した。ガビチョウが野生化したのは森林である。・・・ガビチョウは森林の藪に侵入している。日本で藪に生息する代表的な鳥は、ホーホケキョと親しまれているウグイスだ。しかも両種とも同じように昆虫をよく食べる。競争により圧迫されるとすればまずはこの鳥あたりだろう。・・・生態を明らかにすると同時に、何よりも日本の鳥への影響を明らかにしなくてはならない。ガビチョウの密度が高い場所と低い場所、未侵入の場所で、在来の鳥の密度を調べる。もちろんガビチョウがたくさん生息する場所では、予想通りウグイスを中心とした在来の鳥の個体数が少なく・・・ない、なぁ・・・。あれ? もしかして冤罪?」。結局のところ、ガビチョウによる国内での生態系悪影響は報告されていないというのです。東京・多摩動物公園を訪れた時、園を囲む森のあちこちから騒々しい大きな鳴き声が聞こえてきて、びっくりしたことを思い出しました。それが野生化したガビチョウだったのです。