「永仁の徳政令」とは、どういうものなのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2616)】
カルガモ(写真1~3)の母親に見守られ、9羽の若鳥が夢中で採食しています。カワラヒワ(写真4)が囀っています。ニワトコ(写真5)、ヒメコウゾ(写真6)が実を付けています。人生は運が97%、実力が3%と、私は考えています。私がここまでこられたのは、46年前に、三共(現・第一三共)の宮崎連絡所から北九州出張所に異動になった時、宮崎連絡所の仲間たちから贈られた高千穂の開運面(写真7)のおかげなのでしょう。
閑話休題、『徳政令――中世の法と慣習』(笠松宏至著、講談社学術文庫)は、鎌倉時代の「永仁の徳政令」を題材に、中世の法と慣習を考えるという、いささか学術的な書物です。
「13世紀の世紀末、今から約700年前の仁5(1297)年、今は『永仁の徳政令』とよばれている法令が、鎌倉幕府から発布された。この法令は20世紀世紀末の現在、中学・高校の教科書はもとより、あらゆる種類の概説、年表、さらには最近はやりの歴史漫画にさえ、その内容が紹介されている。ということは、現代の日本人のほとんど全部が、その名を二度や三度は聞いたり読んだりしていることは確実である」。かなりの歴史好きと自負している私だが、恥ずかしながら、「永仁の徳政令」は知りませんでした。
永仁徳政令とは、どういうものなのでしょうか。「これ(第二条)が有名な中でももっとも有名な条文で、永仁徳政令といえばまずこの法を念頭に思い浮かべることは、当時も今も変りはない。この条のポイントはつぎの4点である。①所領を質流ししたり、売買したりすることを禁止する。②立法時点以前に売却した所領は、本主(売却人)に返還させる。③売買契約を承認する幕府の安堵状を帯びているもの、および20年を経過したものは、②の適用を除外する。この除外令を無視して返還を迫る者は処罰する。④買得人が『非御家人・凡下』(御家人でない武士や庶民)であれば、20年経過後も売主に返還しなければならない。――要すれば、今後の売買・質入れを全面的に禁止すると同時に、安堵地・年紀地以外の既売買地を無償で取りもどさせる、これが骨子であって、取りもどされる方には御家人も『非御家人・凡下』も入るが、取りもどす側はいつも御家人である」。
「なぜ売ったものを、タダで取り返すことが『徳政』なのか。現代の常識からみれば、少なくとも取り返される側からは、それは絶対に『徳政』であるはずはない。捨てなければならないのはこの常識であろう。永仁徳政令で、Aという名の御家人が売った所領が、A御家人のもとへもどった。現代の所有の観念からすれば、何より大事なのはAという固有名詞である。しかし、このAをとり払ってみるとどうなるか。御家人の売ったものが御家人の手にもどった、ということになるだろう。もっと単純にいえば、それは『もとへもどる』という現象にすぎないのである。そして、もしこの、あるべきところへもどす(復古)政治こそが、徳政の本質であるとすれば、徳政と永仁5年の徳政令との間の違和感は、ほとんど消滅してしまうだろう」。現代の常識を捨て切れない私は、正直に言うと、どうしても違和感を拭い去ることができません。