奴隷制は今も存在するという事実・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2631)】
ノカンゾウ(写真1)の紅色が濃いものはベニカンゾウとも呼ばれます。オオバノトンボソウ(写真2、3)、ウツボグサ(写真4、5)、ノハラアザミ(写真6)、ゴーヤー(写真7)が咲いています。コガネグモの雌の表面(写真8)と裏面(写真9)は、こんなに違います。ミミズ(写真10)をカメラに収めました。
閑話休題、ルポルタージュ『性的人身取引――現代奴隷制というビジネスの内側』(シドハース・カーラ著、山岡万里子訳、明石書店)は、今現在も奴隷が存在しているという驚くべき事実を、私たちの眼前に突きつけてきます。
「『奴隷制は今も存在する』という事実に驚く読者もいるだろうが、暴力的な強制労働は、現に世界のあらゆる場所で盛んに行われている。2006年の終わりには世界に2840万人の奴隷がいて、おそらくあなたが本書を読む頃には、その数はさらに膨れ上がっているだろう。その中にはインドの子ども奴隷もいて、家々から拉致されて毎日16時間働かされ、中流階級の消費者が飲む紅茶を収穫したり、居間に敷く絨毯を織ったりしている。あるいは南アジア、中南米、アフリカの債務労働者たちがいる。いくら働いても永遠に返済できない借金を負った、もしくは受け継いだ人たちだ。アメリカ国内でも、奴隷が農作物を収穫する――タマネギ、アボカド、トウモロコシを、テキサス、カリフォルニア、フロリダ、ノースカロライナ、サウスカロライナで。世界のカカオ豆の最大5パーセントは、コートジボワールの奴隷の手で収穫されている。ケニアやエチオピアのコーヒー豆収穫でも、今も変わらず奴隷が働いている。剪定ばさみから車軸に至るまであらゆる鋼鉄製品の製造に必要な木炭生産のために、ブラジルの地獄のような窯で木を焼く奴隷がいる。これら2840万の奴隷のうち120万人が、だまされ、さらわれ、誘惑され、家族に売られて、世界中で売春を強要される、若い女性と子どもたちだ。性奴隷は何百人、いや何千人もの男に性サービスを強いられた末に捨てられるが、それが世界で最も利益率の高いこの犯罪産業の、屋台骨となっている」。
「性の奴隷制に伴う残虐行為は邪悪で凶暴で、徹底して破壊的だ。鞭打ち、タバコによる火傷、骨折、飢え――奴隷は皆これらの拷問を受けるが、性奴隷はそれに加え、数えきれぬほど強姦される――1日に10回、15回、20回、あるいはそれ以上。私は世界中の売春宿で言語を絶する残虐行為に苦しむ女性や子どもに出会った。彼ら被害者と対面するのは辛かった。インタビューをするたびに心の痛み、悲しみ、怒りがいよいよ募った。まだ16歳にもならぬうちに、何百人もの男との性行為を強いられ、破壊された子ども。その瀕死の目をのぞきこんだときの感覚は、どんなに言葉を重ねても言い表せない」。
なぜ性的奴隷制は勢いが衰えないのでしょうか? 「性的人身取引に関する政策、警察、メディアの注目が高まっているにもかかわらず、この産業の勢いは止まらない。蔓延しつづける理由は単純だ。莫大な収益性の割にリスクが極端に低いことだ。性的奴隷制は世界中どこの国でも違法なのだから、性奴隷の搾取に加担することは、本来リスクをはらんでいるはずである。ところが性的奴隷犯罪に関して、目に見える実質的なリスクがおよそ皆無であることが、性的人身取引産業が拡大し、衰退の兆しすら見えない直接的な原因だ。リスクの市場原理が急激に働かない以上、そして性的人身取引が莫大な利益を生みつづけるかぎり、この産業は繁栄しつづけるだろう」。
現代の奴隷制を終わらせるために、私たち個人にもできることがあるのでしょうか? ①本書を読んで、その内容をできるだけ多くの人に知らせてほしい。②反人身取引団体に少額でもいいから寄付してほしい。③自分の地域で警戒活動を行う委員会を立ち上げてほしい。④国会議員に手紙を書いてほしい。⑤SNS(ソーシャルメディア)を活用してほしい――と、著者が呼びかけています。