榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

本書から、多くの知的刺激を受けました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2693)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年8月31日号】 情熱的読書人間のないしよ話(2693)

稲田(写真9)では、多数のハネナガイナゴとコバネイナゴ(写真1~8)が飛び交っています。写真は不鮮明だが、交尾(写真1、2)を目撃しました。翅が長く腹端を越えるのがハネナガイナゴで、一方のコバネイナゴは翅が短く腹端を越えない場合が多いが、個体差があり、長翅型のものもいるため、我々素人には識別が難しい昆虫です。ヤマトシジミの交尾(写真10、11)をカメラに収めました。下が雄、上が雌です。ヒガンバナ(写真12、13)、シロバナマンジュシャゲ(写真14~16)が咲いています。

閑話休題、対談集『理想の国へ――歴史の転換期をめぐって』(大澤真幸・平野啓一郎著、中公新書ラクレ)から、多くの知的刺激を受けました。

●アメリカ人と中国人は結構気が合うのではないか
「今後、政府レヴェルでは、米中の争いは続くでしょうけれど、ビジネスの面では、アメリカ人と中国人は結構気が合うのではないかとも感じます。両者とも、自分たちに役立つ新しいことに対してとてもオープンですし、チャレンジ精神もある。そして今、中国で見られる経済的な成功の物語は、昔、アメリカンドリームと言われていたものとよく似ています。リスクを取ってチャレンジして、成功したら英雄になる。ただ、失敗する人たちも星の数ほどいる。政治体制はまったく違うけれども、資本主義のダイナミズムが、日本では潰えてしまったような億万長者の夢を見させている。そういう面を見ていると、両国はビジネスを中心に、案外うまくやっていく可能性があるのではないかという気もします」(平野)。

●世界でも突出した日本の中国嫌い
「世界の先進国グループは、欧米ばかりで、アジアの国は他には一つも入っていないのに、日本だけが入っている。そんな捉え方ですよね。それが大きな自慢の種だったのですが、最近、中国がそこに入ってきて、すごくショックを受けている。だから、嫌い。そんな状態だと考えられます。・・・つまり中国が貧しく、経済的にも政治的にも日本より弱者であるときには、中国が好きだったのに、中国が強くなったら嫌いになっているのですから、情けないとしか言いようがありません」(大澤)。大澤さん、あなたの言うような背景もあるかもしれませんが、それ以上に、私たちは中国というよりも、習近平の覇権主義を嫌っているのではありませんか?

●イチローに見る今後の生き方
「すごく日本的で特殊な考え方と国際的に通用する普遍性とが、直結している。僕は彼(イチロー)の(野球の)やり方は、日本の特殊性と国際的に通用する普遍的な価値との両面をつなぐやり方のモデル、日本人の今後にとって示唆に富むモデルとなり得る、と考えています。・・・そういう点では、大谷翔平選手の二刀流もそうですよね。当初の野球にはあったはずの魅力を、発掘してあらためて提示してみせている。おもしろいのは、イチローの場合も、そしてたぶん大谷の場合も、そうしたことがなし得た背景に、日本の分化、日本的なものの見方や態度があった、ということです。野球だけではなく、どの分野でも似たようなことがあり得るのではないでしょうか」(大澤)。

●「国を愛する」ということ
「作家では、ロシアのリュドミラ・ウリツカヤ、ボリス・アクーニン、ベラルーシのスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチらが連帯して反戦の声明を出しました。彼らは、今のプーチンによるロシアはロシアではなく、本当のロシアはドストエフスキーやトルストイ、チェーホフに代表されるような国なんだと訴えました。彼らがよって立つロシアを示そうとしていたのであり、今おっしゃったことにつながっている態度です。つまり、現政権とロシア市民、文化との切り離しですね」(平野)。