榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「縄文/弥生人モデル」→「渡来説」→「二重構造モデル」という日本人起源論の流れの、これからは?・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2715)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年9月22日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2715)

サトクダマキモドキの雄(写真1、2)、シオカラトンボの交尾(写真3)、ショウジョウトンボの雄(写真4)、シマヘビ(写真5)をカメラに収めました。ヤマモミジ(写真6)が紅葉し始めています。フウセンカズラ(写真7、8)が実を付けています。茶色に熟した実の中には、サルの顔のような種が3つ入っています。イチョウの実(写真9)が落ちています。因みに、本日の歩数は14,797でした。

閑話休題、『縄文人と弥生人――「日本人の起源」論争』(坂野徹著、中公新書)は、縄文人と弥生人を考える手がかりを与えてくれる一冊です。

「敗戦直後の時点で、一方に長谷部(言人)、清野(謙次)、山内(清男)のように、縄文から弥生(さらにその後)への『人種』的連続性を想定する立場(人種連続モデル)、他方に縄文文化と弥生文化の担い手の『民族』的違いを想像する立場(縄文/弥生人モデル)のふたつがあったことになる」。

「北九州、山口などで発掘調査をおこない、新たな日本人起源論の提唱にいたったのが金関丈夫にほかならない。・・・金関によれば、『日本石器時代人』より高身長の『新しい種族』が、弥生文化とともに日本に渡来し、北九州から近畿地方にまで広がった。だがその後、渡来する『後継部隊』はなく、数も少なかったから、長身という形質は『在来種』のなかに拡散・吸収されて、その特徴は失われた。こうした『長身の新しい種族』の出身地候補としてまず挙げられるのは『南朝鮮』だというのが金関の推測であった」。この金関の説は渡来説(渡来・混血説)と呼ばれます。

「(渡来説の)延長戦上にあるのが、1991年に提唱され、現在、日本人起源論の定説とされている埴原和郎の二重構造モデルである。・・・現在、人類学の第一人者として、日本人起源論関係の著作を数多く発表している篠田謙一は埴原説を次のように評している。『形質人類学の研究から導かれた日本人の成立に関する定説である二重構造モデルでは、現代の日本人につながる集団は、基層集団である縄文人と弥生時代に渡来した人々の混血によって成立したと考えている。30年前に提唱されたこのモデルは、少なくともアイヌや沖縄の人々を除く本州、四国、九州のいわゆる『本土日本人』の成立に関しては、現在でも定説として受け入れられている』」。すなわち、「縄文/弥生人モデル」→「渡来説」→「二重構造モデル」という流れが勝利を収めたのです。

著者の坂野徹は、日本人起源論のこれからを、このように予測しています。「縄文/弥生人モデルは絶対的なものかということである。先に埴原の二重構造モデルの登場によって縄文/弥生人モデルが勝利したと述べた。だが最近の人類学では、基層としての縄文人と渡来系弥生人という二項対立図式を乗り越えようとする動きが始まっているようにみえる。たとえば、斎藤成也は、現代人のゲノム解析にもとづいた『三段階渡来説』を唱えており、篠田謙一も、古人骨から抽出したゲノムにもとづき、より多元的なモデルが必要だと指摘している。こうした主張が登場した背景には、従来の骨などの計測からゲノム解析へと人類学の研究方法の主流がシフトしたことがあるが、いずれにせよ、今後、日本人の起源における多元性の認識はさらに深まっていくだろう」。ますます、このテーマから目を離せなくなりそうです。