榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ウクライナがロシア侵攻に対し果敢に戦っている理由・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2773)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年11月19日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2773)

女優の杏似のすらりとした妙齢の美形と、その両親が揃ってバード・ウォッチャーという福田一家に出会い、探鳥の情報交換をしていたところに、ジョウビタキの雄(写真1~4)が登場。セグロセキレイ(写真5~7)、ハクセキレイ(写真8~11)、ムラサキツバメの雌(写真12)、ウラギンシジミの雄(写真13~15)をカメラに収めました。我が家の餌台「カラの斜塔」にシジュウカラ(写真16、17)が入れ替わり立ち替わりやって来ます。因みに、本日の歩数は11,656でした。

閑話休題、『[図説]ユーラシア「帝国」の地政学――ロシア・中国の行動原理がわかる』(宮崎正勝著、PHP研究所)で、とりわけ興味深いのは、●中国の隋・唐は、漢人でなく、モンゴル系鮮卑人が建てた国、●ロシアはスウェーデン系バイキングが建てた国、●ウクライナがロシア侵攻に対し果敢に戦っている理由――の3つです。

●隋・唐の建国
「中国に進出した遊牧民の間では、(モンゴル系の)鮮卑系の拓跋部族が最後に勝ち残った。華北の統一に成功した拓跋部族は多くの遊牧民、狩猟民を統合して北魏(386~534年)を建てたが、孝文帝(在位:471~499年)の時期に徹底した『漢化(中国化)政策』により、言語、服装、習俗を漢化して有力豪族と結び付き、中国の農業社会に根を下ろしていく。『漢化』というのは中国的表現だが、遊牧民の側から見るならば、中国の支配のための便法だった。鮮卑語の使用禁止、胡服の着用禁止など急ピッチの『漢化』を進めた孝文帝は、わずか33歳で世を去る。中国では、遊牧民による征服が『漢化』という操作で効果をあげて、遊牧民も漢人とみなされるようになり、王朝の担い手として認知された。『漢化』マジックの効果は、覿面だったのだ。そうした操作を経て、実質的に鮮卑人が支配した唐帝国は、日本では最も繁栄した漢人の農業帝国とみなされるようになる。しかし実際には、鮮卑系の拓跋部族の支配が北魏、隋、唐と500年以上も続いた。中央ユーラシアの遊牧民の帝国が、最も繁栄した農業帝国として定着したのである。『漢化』は、組織的に漢人と遊牧民のハイブリッド化が進んだことを意味する」。

中国の歴代王朝が漢人によるものか、漢人以外によるものかは分かり難いが、一覧表にされているので、大助かり!
①秦・漢帝国(約440年間)=漢人の支配。遊牧民の匈奴との全面戦争
②隋・唐帝国(約320年間、北魏以後では約520年間)=モンゴル系の鮮卑人拓跋部族の支配
③宋帝国(約170年間)=漢人の支配。歳貢(さいこう)により遊牧民の遼から「平和」を買う
④南宋と金(約160年間)=華北を満洲人が支配(金)。南宋は金に臣下として仕え、「平和」を歳貢で買う
⑤元帝国(約100年間)=遊牧民モンゴル人の支配
⑥明帝国(約280年間)=漢人の支配
⑦清帝国(約280年間)=満洲人とモンゴル人の支配

●ロシアの建国
「バルト海から南下し、川船に乗ってロシア各地の森の毛皮を集めた、バルト海の最奥部に住むスウェーデン系バイキング(スラブ人に『船のこぎ手』の意味でルーシ、またはルスと呼ばれた)は、北部の毛皮の集散地にノヴゴロドという都市国家を建国した。ルーシによるノヴゴロド国の成立(9世紀中頃)をもってロシアの起源とみなすことが多い。ルーシは、『ロシア』という国名の語源になっている。ノヴゴロドのルーシが、ビザンツ帝国に近いキエフ(キーウ)に移住して、キエフ・ルーシ国(9~13世紀)を建設。ルーシは人数が少なかったため、やがて先住民のスラブ人に同化した。森林地帯と草原地帯の境界に位置するドニエプル川河畔のキエフ公国(キエフ・ルーシ国)は、黒海とカスピ海の間の毛皮交易を支配し、ビザンツ帝国よりギリシア正教を受け入れたが、13世紀にモンゴル帝国のバトゥの軍隊に征服され、消滅した」。

「ロシア帝国は、中央ユーラシアの遊牧勢力を取り込んだ森林地帯の弱小勢力のモスクワ大公国が、シベリアから、ロシア、東欧、ヨーロッパ(パリ付近)まで広がる『広大な平原』、バルト海、黒海(その先に地中海)、カスピ海(その先にイスラーム世界)を結び付け、17世紀から19世紀にかけての一連の軍事制服(南化政策と総称される)により、ユーラシアの東西に領域を拡大した新興帝国だった」。

●ウクライナが強い理由
「ウクライナはロシアでは『小ロシア』『辺境』とみなされたが、ウクライナのコサックがロシアの軍事の中心を担っていたのである」。コサックこそ、ロシア帝国軍の最強部隊と謳われた軍事集団だったのです。

歴史を学ぶ面白さを再認識させてくれる一冊です。