榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

関東大震災時の朝鮮人大量虐殺絵が訴えてくるもの・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2801)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年12月17日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2801)

ポインセチア(写真1、2)、シクラメン(写真2)をカメラに収めました。

閑話休題、『関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く』(新井勝紘著、新日本出版社)は、目を背けたくなる衝撃的な一冊です。関東大震災時に、朝鮮人を尋問したり、拘束したり、連行したり、捕縛したり、さらには殴打し虐殺する場面が生々しく描かれている絵画と、それを巡る証言で構成されているからです。

「なかには直接その渦中にいた者もいたであろうが、少なくともこの事態を冷静に見つめていた画家たちや画学生が存在した。絵筆という道具を使って、この光景を描写する仕事に没頭した。この場に生存している者の責任というような感覚が生まれたのではないだろうか。何日も何日も、何十枚も何百枚も、何本も何本も、その真実を伝えようと、衝き動かされるようにして、スケッチや絵巻物を描いていたのである。・・・絵筆を通して描いてくれた絵画から、後世に必死に伝えようとした画家たちの熱い思いを、感じ取ることができる。そこには大げさな教訓や指弾はないが、画面のなかに込められた体験者ならではの歴史的事実に対する、真摯な『まなざし』を読み取ることができる。彼らの描いた絵のなかから訴えてくる、虐殺現場にただよう異様な民衆自身の感情と行動を、私たちはどのように受け止めたらいいのだろうか。たじろいでしまうことがある」。

絵画と証言によって、朝鮮人大量虐殺は、警察官、軍隊、自警団が混然一体となって実行したことが明らかにされています。さらに言えば、絵画で背後に描かれている民衆も加害者の一員であるという重い事実を、私たちは忘れてはいけないのです。