榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ハングルという表音文字を創出した李氏朝鮮王朝の国王・世宗・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2821)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年1月6日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2821)

ボタンの若木が藁で作った雪囲いで守られています(写真1)。

閑話休題、15世紀前半に李氏朝鮮王朝の国王・世宗がハングルを創出したことは知っていたが、ハングルがどういうものか、世宗がどういう人物かは知りませんでした。

世宗(セジョン)、ハングルで世の中を変える――ハングル創製の物語』(キム・スロン著、チョ・ギョンギュ イラスト、前田真彦監訳、架け橋人の会訳、クオン)のおかげで、ハングルについて、世宗について、イラストの助けを借りて多くのことを学ぶことができました。

「(ハングルは)身分に関係なく老若男女誰もが、簡単な文字で知識と情報を分かち合うというものでした。・・・文の構造が異なる中国の漢文を借りて、自国の言葉を書くという言語上の矛盾は、朝鮮でも日本でも同じでしたが、日本では9世紀頃に固有の文字(ひらがな、カタカナ)を作っていち早く解決し、朝鮮は15世紀になってようやくその問題を解決することとなったのです」。

「漢文や吏読(=漢字を韓国語の語順に合わせて書く方法)で書かれた難しい本は人々を正しく導くには役に立たないので、新しい文字が必要だ。そうして作った文字がまさに訓民正音(ハングル)だった。『訓』は『教える』、『民』は『一般の人々』を意味する。『正音』は文字通り『正しい音』で、ここには世宗の壮大な夢が込められている。世宗は人々が話すすべての言葉、人々に聞こえる天地自然のあらゆる音を正確に書き表せる(表音)文字を作りたかった。それで文字の名前に『正音』という言葉を入れたのだ」。

「世宗は徹底的に観察した結果、子音とは『息が発音器官に当たって出る音』のことで、母音とは『息が発音器官のどこにも当たらずに出る音』であることを突き止めた。ここで『当たる』とは『空気が自然に流れずに妨げられる』ことを意味する。これがわかると、子音は音が出る場所の発音器官をかたどって文字を作り、同じ所で発音する子音を兄弟のようによく似た形にすればいいと考えた。世宗は数学が好きで、図形を描くのが得意だったので、単純な点・線・円だけで文字を作り、誰でも簡単に書けるようにしたいと考えた。・・・母音は子音のように形をとらえることが容易ではなかった。母音は特定の発音器官が動いて出る音ではないので、子音のように発音器官をかたどることができなかった。しかし世宗には、宇宙のあらゆる音を表せる文字を作るという信念があった。人と地と天が交わり調和して生きる世、そんな世の中の全ての音を表すことのできる調和のとれた文字を作ると決めていた。そのような思いから『天、地、人』の3つを母音字母の基本にしょうと考えた」。世宗は、いろいろと工夫を重ねて、音を形にして文字を作った、分かり易い図形だけで文字を作ったのです。

現在も、世宗が明君と称えられている理由がよ~く分かりました。