榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

エマニュエル・トッドの思考の発展過程の解説書・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2851)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年2月5日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2851)

モズの雄(写真1)、シロハラ(写真2~4)、コサギ(写真5、6)をカメラに収めました。野鳥・植物観察仲間の池上均さんから、シダ植物の珍しいハナワラビ(写真7、8)の群生場所を教えてもらいました。ウメ(写真9、10)が芳香を漂わせています。今宵は満月(写真11)です。因みに、本日の歩数は10,961でした。

閑話休題、『エマニュエル・トッドの冒険』(石崎晴己著、藤原書店)では、エマニュエル・トッドと親交があり、トッドの思想に精通している石崎晴己が、トッドの思考の発展過程を解説しています。

石崎は、トッドの思考のスタート段階を「トッドⅠ」、次の段階を「トッドⅡ」、さらに進化した段階を「トッドⅢ」と呼んでいます。「トッドⅠとは、家族システムの変遷・変動には判断停止をしていた段階、ということになる。こう書けば、トッドⅡとは、家族システムの変遷・変動についての研究、そして、その研究成果を踏まえた世界史と現代世界の解明の作業である、ということは容易にお察し戴けるだろう」。

「ところで、家族システムの共時態という土台ないし舞台の上で歴史が展開し、進行するとして、その進行の原動力は何なのか。それは識字率の上昇である。発展とは経済発展であるという考え方に抗して、識字率の上昇すなわち識字化という文化的発展こそがより重要で、発展というものの本質的側面であって、時系列的にも因果論的にも経済発展に先行する、とトッドは主張する。識字率が進展し、市民の大部分が読み書きの能力を獲得すると、平等な市民からなる同質的な国民=民族が成立し、これが民主主義の順調な作動の条件をなすことになるのである」。

「(高等教育が目覚ましく発達する)結果、教育ピラミッドは逆転し、教育による階層分化が進展して、高等教育修了者と階級脱落に怯える中等教育修了者との分断が深刻化するのである。アメリカのトランプ現象をはじめ、西洋先進国に吹き荒れるポピュリズム現象の主たる原因はここにあると考えられる」。

「トッドⅠは、家族システムという不動の土台、こう言ってよければ、下部構造の上に歴史が展開・進行するものであったが、トッドⅡでは、『家族システムの起源』で解明された家族システムの変遷の歴史を土台とし、下部構造として、世界史はその上に展開・進行することになるだろう。このトッドⅡの『上部構造』、ないし下部構造と上部構造を総合的に叙述するのが、2017年に刊行された大作(『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』)であると言えよう。2つのトッドの『総合』であるから、これをトッドⅢと呼ぶこともできよう。この本は、文藝春秋から刊行予定である」。この訳書は文藝春秋から2022年10月に刊行済みです。