榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

侵略者の手で殺されるかもしれない状況に直面しながらも、ヴォロディミル・ゼレンスキーは逃げない道を選んだ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2870)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年2月24日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2870)

コミミズクを撮影しようと、50人ほどのバード・ウォッチャーに交じり、小雨がぱらつくまで3時間ほど粘ったが、残念ながら現れず。掲載したコミミズク(写真1)は、隣り合った女性バード・ウォッチャーが2月19日に撮影した写真を私のデジカメで写させてもらったもの。コミミズクの出現を待つ間に、モズが捕らえた餌を奪おうとツグミが襲いかかる瞬間を目撃しました(写真2、3)。モズの雄(写真4)、雌(写真5)、ツグミとハクセキレイ(写真6)、鳴き続けるハシボソガラス(写真7)をカメラに収めました。因みに、本日の歩数は12,323でした。

閑話休題、現在、世界で一番注目を集めている政治家は、ウクライナの大統領、ヴォロディミル・ゼレンスキーでしょう。ゼレンスキーを心の中で応援している私にとって、評伝『ヴォロディミル・ゼレンスキー ――喜劇役者から司令官になった男』(ギャラガー・フェンウィック著、尾澤和幸訳、作品社)は見逃すことのできない一冊です。

「ウラジーミル・プーチンはロシアの指導者となって以来、何度も戦争を引き起こしてきた。欧米の一部の国々は、このクレムリンの強者が率いる軍隊が四半世紀にわたってほしいままにしてきた虐殺と圧制を見て見ぬふりをしてきた。現在はウクライナが、それ以前は2015年以降、シリアの反乱軍が拠点とする都市が、2008年にはジョージアが、さらに1999年にはチェチェン共和国が侵攻や攻撃を受けている。プーチンは自分に歯向かってロシア連邦からの離脱をめざしたり、ロシアの覇権を脅かす人々を血祭りにして屈服させてきた」。

「(オリガルヒ<新興の大富豪>のコロモイスキーが買収した)テレビ局1+1を舞台に、コロモイスキーとゼレンスキーは2012年以降、娯楽の世界と政治の世界に関わる互いの知恵を融合させていく。やがてウクライナの大統領になるゼレンスキーは、人気の高いテレビ番組のおかげで名声を獲得し、自らが運営する創作会社『第95街区』に利益をもたらすようになる。・・・コメディアンのゼレンスキーは1+1で放送された『国民の僕(しもべ)』で、それまでのキャリアで最大の成功を収める。ある意味で、オリガルヒのコロモイスキーは、のちに俳優から政治家に転身するゼレンスキーにウクライナの大統領にまで上り詰める舞台を提供したともいえる」。

ゼレンスキーは大統領就任演説を、<親愛なる国民のみなさん。私はこれまでの人生を尽くしてウクライナ国民を笑わせてきました。それが私の使命だったのです。これから先、私はウクライナ国民がもう泣かずにすむよう全力を尽くします>と締めくくりました。

「クレムリンの支配者プーチンは、このウクライナの新大統領を露骨にさげすんでいた。・・・おそらくプーチンは、コメディアンから政治家に転身したこの人物が、ロシアから領土要求を突きつけられたら簡単に譲歩すると考えていたのだろう」。

「(大統領となった)彼が選んだ武器は、クリヴィー・リフの高校の舞台から、モスクワの劇場に至るまで、この若き道化役者に成功をもたらした武器だった。それは、大統領になる以前のゼレンスキーが、ウクライナ国内で流される広大な映像の世界の支配者となるきっかけになった言葉とイメージに対するセンスだった。つまるところ、ゼレンスキーに生涯最大の役どころを与えたのは彼の宿敵であった。ウラジーミル・プーチンはこの道化役者を恐るべき敵に変えてしまったのである」。

「ゼレンスキーの行動を自らの模範にしたいと考える人々は、おそらく彼の人となりに感銘を受けているのだろう。ゼンレスキーは彼を『最大の敵』と呼んだ侵略者の手で殺されるかもしれない状況に直面しながらも、逃げない道を選んだのだ。近年、ウクライナでもほかの国でも、彼と同じような危うい状況に立たされた指導者はいずれも逃げ出している。だがゼンレスキーは逃げなかった」。
 
ゼレンスキーよ、これからも頑張ってくれ!

この本に出会えて、本当によかった!