ソ連軍に包囲され、外界から孤立した小さなドイツの町で起きた集団自殺の記録・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3065)】
雨台風襲来につき、読書三昧――。
閑話休題、『デミーンの自殺者たち――独ソ戦末期にドイツ北部の町で起きた悲劇』(エマニュエル・ドロア著、剣持久木・藤森晶子訳、人文書院)によって、恥ずかしながら、独ソ戦末期にドイツ北東部のデミーンという小さな町で、ソ連兵の暴力を恐れた人々が集団自殺を遂げたことを初めて知りました。
「(ソ連の)兵士たちの一部は、アルコールによって抑圧から解放され、集団による優越感からより攻撃的になって、最も弱い者たち、つまりデミーンの女性たちを襲うという暴力行為に及び始めていた。感情の差し錠が外れてしまったのは、間違いなく酒のせいだった。さらに、かなりの兵士たちが暴力の行使者なり婦女暴行の見物人なりとして、暴力を濫用するに至ったのは、彼らが集団でいたことも影響した。女性たちが何度も暴行されたという事実は、これらの兵士たちが彼女たちの肉体に行使しようとした支配が増大していったことをよく示している。集められた全ての証言がこれらの強姦について、程度の差はあれ、それと分かるように言及している。クールマン家の使用人の手紙の中には、建物の住民の一人、ローレンツ夫人が、薬剤師の娘の身代わりになり、1945年4月30日の夜の間に4度も暴行されたことが読み取れる。2人のロシア人将校と1人のポーランド出身兵を含む様々な軍人が、この家に侵入し、ローレンツ夫人とミヒェル夫人を強姦したのは明らかだ。・・・(5月1日の)朝になり、数人の女性や娘たちが、途方にくれて泣きながら、イレーネが避難していた屋敷におぼつかない足取りでやってくるのを目にしている。<彼女たちの中には、ロシア兵に捕まった避難民の集団の中にいて塹壕の中で強姦されたと語る者もいた。何人に犯されたのかも思い出せないそうだ。腹部の苦痛のために歩くこともままならない女性もいた>。女性たちは、数で勝り、無防備な肉体に力で圧倒し続ける兵士らのなすがままになった。これらの数多くの強姦は、そういう類いの暴力であった」。
「確かなことは、ソ連兵たちによる強姦と火災という戦争暴力が重なり、自殺することでしか、この悪夢のような経験からの出口はないとみた町の多くの住民たちの絶望を引き起こしたということである、多くの者が、身投げしたり、首を吊ったり、頭を撃ち抜いたりして命を絶つ決意をした。彼らは生きている意味はもうないと思ったからだ。他には、薬品を使うという方法もあった。・・・かくしてデミーンは、数日の間、その規模ゆえにドイツ史上において比類のない集団自殺の舞台となった。数百人の女性たち、子供たち、乳飲み児たち、老夫婦たちが自ら進んで死を迎えたのである。・・・男たちは町にほとんどいなかった。数週間前から戦争捕虜だったり、従軍中だったり、戦死していたからだ」。
強姦、放火などの戦時暴力が発生するメカニズムに迫る一冊です。