卒業式前日、先輩に好きと告白した女子高生が校舎の屋上で遺体となって発見された・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2868)】
20mほどの高さの樹上に止まっているアカハラ(写真1~3)を撮影していたら、クッションのような落葉を踏んで、カメラを手にした女性がそっと近づいてきました。目で「何ですか?」と尋ねられたので、アカハラですと答え指差しました。見つけ難い標的なのに、カメラを構えた女性が迷うことなく撮影し終えたのにはびっくりしました。ツグミ(写真4、5)、ヒヨドリ(写真6)、ハクセキレイ(写真7)、ジョウビタキの雌(写真8、9)をカメラに収めました。シダレウメ(写真10)、カワヅザクラ(写真11~13)が咲いています。水路には薄い氷が張っています(写真14)。
閑話休題、短篇推理小説集『記憶の中の誘拐――赤い博物館』(大山誠一郎著、文春文庫)に収められている『夕暮れの屋上で』は、推理小説本来のドキドキ感を味わわせてくれます。
高校の卒業式前日、夕日が照らす校舎の屋上で――。「『先輩、わたしも座っていいですか』。少女が訊くと、『もちろん』と微笑みが返ってきた。隣にそっと腰を下ろす。じんわりと幸福感がこみ上げてきた。・・・『わたし、先輩のことが好きなんです。ずっと、ずっと一緒にいたいんです。だめでしょうか』。言ってしまった。少女は息を詰めて相手を見上げた。先輩はびっくりしたように目を見開いたが、その顔には微笑みが浮かんでいた。よかった、嫌われてはいない。少女は勇気を奮って、その先の言葉を続けた。澄んだ声が夕空に流れていく。少女は、この先自分にどんな運命が待ち受けているか知らなかった」。
2年1組の藤川由里子が後頭部をコンクリートの花壇の角にぶつけて死んでいるのが発見され、彼女が殺されたらしいということは、公然の秘密になっていました。4階の教室でワックスがけをしていた業者が耳にした「――先輩、もうすぐお別れですね」、「――わたし、先輩のことが好きなんです。ずっと、ずっと一緒にいたいんです。だめでしょうか」という言葉を基に、由里子が属していた美術部の先輩、3年生の友永慎吾、小野沢洋、桂木宏平が犯人ではと疑われたが、結局、警察は「先輩」を突き止められず、迷宮入りとなってしまいました。
その23年後、警視庁付属犯罪資料館館長・緋色冴子警視が事件解決に乗り出した結果、思いもかけない真実が明らかになります。
推理小説にこういうトリックがあり得たのかと、呆然とする私。