榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

32歳の哲学博士号を持つジョイは、聖書のセールスマンに義足を持ち去られてしまう・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3044)】

読書クラブ 本好きですか? 2023年8月18日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3044)

ハクセキレイ(写真1)、アブラゼミの雄(写真2)、雌(写真3)、サトキマダラヒカゲ(写真4)、ジョロウグモの雌の背面(写真5)、側面(写真6)、腹面(写真7)、体長4.5cmほどのナメクジ(写真8)をカメラに収めました。ナツズイセン(写真9)、キツネノカミソリ(写真10)、メマツヨイグサ(写真11、12)、ノシラン(写真13)が咲いています。

閑話休題、『オコナー短編集』(フラナリー・オコナー著、須山静夫訳、新潮文庫)に収められている『善良な田舎者』は、改めて、「善良」というものを考えさせられる短篇小説です。

哲学の博士号を取った「ジョイは彼女(ホープウェル夫人)の娘で、ブロンドの髪をした大柄な女で、片足が義足だった。彼女は三十二歳になっていて、非常に教養があったが、ホープウェル夫人は彼女のことを子どもだと思っていた」。

ホープウェル夫人が雇っている家政婦のフリーマンさん一家は「善良な田舎者だった」。

ホープウェル夫人宅に聖書のセールスにやって来た若者は「善良な田舎の若者」です。

納屋でジョイと若者が抱擁後、「彼は体をかがめて唇を彼女の耳につけた。『あんたの木の足がくっついているところを見せてくれ』と彼はささやいた」。

「『(義足を)はずしたり、つけたりするのをやって見せてくれ』。彼女は彼のためにそれをはずし、またもとどおりにつけた。すると、彼はそれを自分ではずしたが、まるでほんものの足にさわるようにやさしく扱った」。

「『おれは善良な田舎者さ』と彼は言って、唇をわずかにねじまげた」。

「『義足を返して!』と彼女はかんだかく叫び、そのほうに突き進もうとした。しかし、彼はやすやすと彼女を押し倒した」。

何ということでしょう。彼はその義足をスーツケースに入れ、立ち去ってしまったのです。