関東大震災時、千葉県東葛飾郡福田村で惨劇が起こったことを、君は知っているか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3082)】
【読書クラブ 本好きですか? 2023年9月26日号】
情熱的読書人間のないしょ話(3082)
タコノアシ(写真1~3)、ヒガンバナ(写真4、5)が咲いています。
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閑話休題、迂闊なことに、私の野鳥観察コースの一つである千葉・野田の三ツ堀地区で、関東大震災の混乱の中、残虐な事件が起きたことを知りませんでした。
『福田村事件――関東大震災・知られざる悲劇』(辻野弥生著、崙書房出版)によって、その全体像を知ることができました。
関東大震災直後の大正12(1923)年9月6日、利根川沿いの千葉県東葛飾郡神田村大字三ツ堀(現・野田市三ツ堀)で、香川県からやって来ていた売薬行商人の一行15人が自警団に包囲され、うち子供を含む9人が虐殺されたのです。
殺されたのは、29歳の男性、その妻26歳、彼らの長男6歳、長女4歳、29歳の男性、その妊娠中の妻23歳、彼らの次男2歳、26歳の妻の弟18歳、24歳の男性――の9人です。香取神社前の店の床几で休憩していた9人は殺害され、神社の鳥居付近で休んでいた6人は辛うじて難を逃れることができたことが明らかにされています。彼らは貧しく生活が苦しいため、行商生活を繰り返していたのです。
許されないことだが、流言飛語に煽られ、各地で朝鮮人虐殺が行われたことは事実です。この福田村事件は、●日本人が朝鮮人と疑われて殺されてしまったこと、●この行商人一行が、当時、厳しい差別を受けていた被差別部落の人々であったこと、●一部の村民が、彼らは朝鮮人ではないと主張したが、興奮した大勢の人間を制御することができなかったこと――が、問題を一層複雑にしています。
改めて、差別という人間の心の奥底に潜む問題を考えさせられる一冊です。
惨劇の現場となった香取神社(写真7、8)を訪れました。どれほど怖かったか、どれほど無念だったか、犠牲者たちの思いを察すると、胸が詰まりました。