映画『福田村事件』は、私が見た日本映画の中で最も印象に残る作品の一つだ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3084)
辛うじて、カケス(写真1、2)の一部分を撮影することができました。オンブバッタの雄と雌(写真3、上が雄)、ツリガネニンジン(写真4、5)、落下したトチノキの実(写真6)をカメラに収めました。因みに、本日の歩数は11,192でした。
閑話休題、映画『福田村事件』(森達也監督、井浦新・田中麗奈・永山瑛太出演、ドッグシュガー)は、長年生きてきた私が見た日本映画の中で最も印象に残る作品の一つです。
関東大震災直後の大正12(1923)年9月6日、利根川沿いの千葉県東葛飾郡神田村大字三ツ堀(現・野田市三ツ堀)で、香川県からやって来ていた売薬行商人の一行15人が自警団に包囲され、うち子供を含む9人が虐殺された史実に基づいています。
香取神社前の店の床几で休憩していた9人は殺害され、神社の鳥居付近で休んでいた6人は辛うじて難を逃れることができたことが明らかにされています。彼らは貧しく生活が苦しいため、行商生活を繰り返していたのです。
許されないことだが、流言飛語に煽られ、各地で朝鮮人虐殺が行われたことは事実です。この福田村事件は、●日本人が朝鮮人と疑われて殺されてしまったこと、●この行商人一行が、当時、厳しい差別を受けていた被差別部落の人々であったこと、●一部の村民が、彼らは朝鮮人ではないと主張したが、興奮した大勢の人間を制御することができなかったこと――が、問題を一層複雑にしています。
この映画が私にとって最も印象に残る作品の一つと断言するのは、3つの理由によります。
第1は、あってはならない事件が起こってしまったことを決して忘れてはいけないという、森達也を始めとする製作陣と出演者たちの熱い思いが籠もっていること。
第2は、史実を踏まえながら、群像劇という形を採用したことによって、人間ドラマとしての厚みが得られていること。犠牲者たちにも、加害者たちにも、その他の人たちにも、当然のことながら、それぞれのドラマがあることを思い知らされました。
第3は、佐伯俊道・井上淳一・荒井晴彦の脚本が、入念に寝られ、よく考え抜かれていること。自警団、村人たちに取り囲まれ、厳しく問い詰められる行商人一行のリーダーの「鮮人なら殺してええんか」という台詞に、この作品の本質が凝縮しています。
差別を目にして、敢然と勇気ある行動が取れるのか、止めさせたいと思っても傍観者に留まるのか、お前はどちらなんだと鋭く問いかけてくる作品です。
『映画<福田村事件>公式パンフレット』(佐藤美侑・米原範彦編、太秦)は内容が充実しているので、映画に対する理解を深めてくれます。