榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

戦時中、広島県の大久野島に陸軍の毒ガス工場があったことを、君は知っているか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2477)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年1月28日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2477)

ヤマガラ(写真1)、アオジの雌(写真2、3)、セグロセキレイ(写真4)、ハクセキレイ(写真5)をカメラに収めました。

閑話休題、読書仲間の小楠あゆみさんに薦められた『地図から消された島――大久野島 毒ガス工場』(武田英子著、ドメス出版)を手にしました。

本書によって、戦時中、広島県の大久野島に陸軍の毒ガス工場があったこと、ここで作られた毒ガスが戦場で使用されたこと、そして、毒ガス傷害に苦しむ工場関係者が多数いることを知りました。

「いまも、毒ガス傷害に苦しむ人たちが数千人もおられると知って強い衝撃を受けた。旧従業員、徴用工、動員学徒、動員児童、女子挺身隊、勤労奉仕体など、軍のきびしい管理のもと、『国のために』と刻苦して働き抜いた人たちの、その障害とはどのようなものか。いったいどのようにして、陸軍は化学戦への道を歩み、非人道な毒ガス戦を行ったのか。しかもそれが東京裁判でも免責され、戦後もずっと埋もれたままだったのはなぜか。いくつもの問いを抱いて、私はそれから何度も現地を訪れ、多くの方たちを訪ねた。大久野島毒ガス問題を問うことは、過去の真相を知るのみならず、今日に及ぶ化学戦の実体を問う意味からも重要なのだが、当時まだその全容は不明だった。手がかりは毒ガス傷害者の方たちの証言や、その治療と毒ガス後遺症の追究を続ける医師たちの話、教師たちの掘り起しの報告などであった」。

「毒ガスそれ自体環境を汚染し、人体を侵蝕する恐るべき激毒物である。万全の防護対策はあり得ず、少しの手落ちや予知予測のゆるみがあれば、毒ガスは手加減なく人体に浸透する。毒ガス製造は機械化されてはいたが、手作業の部分もかなり多く、筒類の仕上げや火薬関連の作業、発煙剤の製造工程などの防護対策や装備など、『これでは危険だ』と思うことがしばしばあったと、何人もの声を聞いた。毒物との接触が多くなるため被害は多発する。・・・大久野島全島に毒ガス汚染は深まっていた」。

第二次世界大戦では国際条約で毒ガス使用が禁止されていたにも拘わらず、満州の陸軍731部隊(隊長は悪名高き石井四郎)により毒ガスの実験が行われていたこと、大矢野島毒ガス工場で製造された毒ガスが731部隊に提供されていたことにも言及されています。

二度と戦争はしてはいけないという思いを強くしました。