ウィリアム・シェイクスピアに関することなら、何でも聞いてくれ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3163)】
75分間、東京・文京の小石川後楽園のあちこちで、カワセミの雄(同一個体)と至福の時を過ごすことができました。因みに、本日の歩数は11,641でした。
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閑話休題、『シェイクスピア、それが問題だ!――シェイクスピアを楽しみ尽くすための百問百答』(井出新著、大修館書店)は、ウィリアム・シェイクスピアという人物をより深く理解するのに最適な問答集です。
●実在の人物ですか?
「もちろん実在の人物です」。著者は、シェイクスピアの名前を隠れ蓑にした別人説を否定しています。
●どんな恋をしましたか?
「恋の病にシェイクスピアが何度罹ったかはわかりませんが、少なくとも18歳の夏に生涯忘れられない恋をしたことは確実です。自宅から西に歩いて30分ほどのショタリー村にハサウェイ家という裕福な農家があり、恋の相手はその家の長女アン(1555?~1623年)でした。彼女は8歳年上の女性でしたが、もちろん年の差はあまり問題ではなかったかもしれません。・・・逢瀬を重ねて11月、彼女の妊娠が発覚。二人は急いで結婚の手続きをとり、所帯をもちました。長女スザンナが生まれたのは翌年の5月でした」。
●どんな奥さんでしたか?
「現在わかっているのはアンが『エール』と呼ばれる醸造酒の生産に関わっていたことです。記録によれば、彼女は醸造・蒸留酒用のモルトを所持しています。・・・しかもそれがかなりの収入をもたらしていたようで、1600年代になると彼女は金貸し業にも手を染めています。・・・こうしてみると、ストラトフォードに残されたアンは、悲劇のヒロインではなかったことがわわります。彼女は家事や家計を切り盛りするだけでなく、地域の人々や親類縁者と相互協力しながら子どもを育て、寄宿人や下男下女を家に住まわせながら所帯を守り、手広く商いをして地域経済に貢献する、自立した女性だったのです」。著者は、夫妻の不仲説、悪妻説を採用していません。
●どのくらいの年収と資産がありましたか?
「シェイクスピアは大変な資産家でした。・・・醸造業で成功していた妻アンの協力があったかもしれませんが、劇場株主兼座付き作家という実入りの良い境遇が莫大な財産をもたらしていたのは確実です。ある学者の計算によると彼の平均年収は約200ポンドで、これは当時、待遇の良い学校教師がもらっていた年収の10倍にあたります。・・・蓄財にも熱心で・・・劇作だけでなく、財テクにも天才的な冴えを見せるシェイクスピア、恐るべし」。
●どんな性格の人でしたか?
「天才肌の人間は付き合いにくいというイメージがありますが、どうやらシェイクスピアは例外だったようです。性格の良さはデビュー当時からすでに定評がありました。・・・それからも評判は一定していて、同時代人たちは『心も気持ちもおおらか』で、『友情に篤く』、『善良なウィル』に賛辞を惜しみません」。
●作品はすべてオリジナルですか?
「当時の劇作家は、何の躊躇もなく、先行する物語や戯曲などの材源を使って芝居を書いていました。・・・彼が書いたとされる37作品のうち、『恋の骨折り損』、『夏の夜の夢』、『テンペスト』の3編を除いて、すべて何らかの材源があります。例えば有名な『リア王』は、作者不詳の『リア王実録年代記』という先行する劇が明らかに種本になっていますし、『ハムレット』の場合も、シェイクスピアのいわゆる『オリジナル』作品ではありません。・・・劇作家の本領とは、すでに人々によって親しまれていた劇や物語を自分なりに料理し、観客の嗜好に合うよう味付けをすることであり、その出来映えで勝負する、つまり翻案脚色が腕の見せどころでした」。