榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

若い時に出会いたかった作品・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3253)

【月に3冊以上は本を読む読書好きが集う会 2024年3月12日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3253)

ブルピネラ・フロリパンダ(写真1)が咲いています。福岡から会いに来てくれた三共時代の後輩と昼食を共にし、昔話に花が咲きました。因みに、本日の歩数は11,979でした。

閑話休題、若い時に出会いたかったという本に年齢を重ねてから巡り合うことがあります。短篇集『野ぶどうを摘む』(中沢けい著、講談社)に収められている『野ぶどうを摘む』は、まさに、そういう作品です。

青春時代に、好きになった女性がどういう生活を送っているのか、どういう考え方をしているのか、どういう価値観を持っているのか分からず、悶々とした経験があるからです。

高校生の久枝は、1学年上の高志から「あなたのことを好きだったわけではないのだから」、「女の人の身体に興味があったんだ」と言われても別れられず、会社勤めをするようになっても、ずるずると関係を続けています。

「久枝は暖かな高志の身体を胸の中へ抱きしめた。高志の内で性欲が樹木のようにざわめいている。乳房が掌で包み込まれる。身体の奥深くに隠されていた小さなオレンジ色の玉がころがり出、弾け、飛び散る。身体がしなう。高志の掌が熱い。内側でざわめく樹の枝から枝へと久枝は吹き上げられる。自分のかすれた声を遠くに聞く。枝から枝へと渡る久枝の身体は熱を帯びてゆく。唇がうっすらと開く」。