士は己を知るもののために死す・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3291)】
サクラのウコン(写真1~4)とギョイコウ(写真5~8)、シバザクラ(写真9)が見頃を迎えています。キタキチョウ(写真9)、シオヤトンボの雌あるいは未成熟な雄(写真10)、コイ(写真12)をカメラに収めました。写真を撮られるのが大嫌いな撮影助手(女房)は、私のカメラが向けられているのに気づくや否や、こういう行動に出ます(写真13)。我が家で、クサギカメムシ(写真14)を見つけました。
閑話休題、『現代語訳 史記』(司馬遷著、大木康訳、ちくま新書)で、とりわけ興味深いのは、●刎頸の交わり、●狡兎死して良狗烹らる、●士は己を知るもののために死す――の3つです。
●刎頸の交わり
<「考えてみよ、あの強い秦が趙に武力を加えてこないのは、われわれ二人がいるからなのだ。いま二匹の虎が闘えば、いきおいどちらかは死ぬ(両虎共に闘わば、其の勢い俱には生きず)。わたしがじっとがまんしているのは、国家の急を優先し、個人的な復讐を後にしようとしているからなのだ(国家の急を先にして私讐を後にす)」。廉頗はそれを聞くと、肌脱ぎになっていばらの笞を負い、賓客にとりついでもらって蘭相如の門に行き、謝罪していった。「下賤なわたくしには、将軍がこれほどひろい心をお持ちだったのがわからなかったのです」。かくして二人は仲良しになり、刎頸の交わりを結んだのであった>。
「秦は結局この二人のいる間には、趙に手出しができなかった。刎頸の交わりとは、相手のために首を斬られてもかまわないほどの友情。この言葉の出典がここにある」。
●狡兎死して良狗烹らる
<韓信はその(鍾離眛の)首を持って、陳で高祖に謁見した。高祖は武者に命じて韓信をしばらせ、車に押し込めた。韓信がいった。「たしかに『すばしこい兎が死ぬと、猟犬は煮殺される。空高く飛ぶ鳥が尽き果てると、弓はしまいこまれる。敵国が破れ去ると、謀臣も滅ぼされる(狡兎死して良狗烹られ、高鳥尽きて良弓蔵められ、敵国破れて謀臣亡ぶ)』というとおりだ。天下がすでに平定されたのだから、わたしが煮られるのも当然だ」>。
●士は己を知るもののために死す
<予譲は山中に逃れていった。「ああ、士は己を知るもののために死に、女は己を気に入るもののために化粧する(士は己を知る者の為に死し、女は己を説(よろこ)ぶ者の為に容(かたち)づくる)。いま智伯はわたしを知ってくれた。わたしはどうしても仇を討って死に、智伯に恩返しをしなければならない。それでこそわが魂も恥ずることがないのだ」。そこで姓名を変えて受刑者になりすまし、宮殿に入って厠の壁塗りをし、匕首をしのばせて、襄子を刺そうとした>。
「予譲の場合、『士は己を知るもののために死ぬ』という点が重要である。かつて仕えた范氏、中行氏は、自分をそれほど重用してくれなかった。だから彼らが滅びた時にも、それだけの対応しかしなかった。しかし、智伯は、自分の能力を認めて重用してくれた。だからこそ、これだけの苦しい思いをして、仇を討とうとしているのだ」。
企業勤務時代の私も、能力を高く評価してくれた上司に報いようと、「士は己を知るもののために死す」という心意気で頑張ったことを懐かしく思い出します。