榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

20年前に亡くなった母の蔵書を整理していくうちに、母の別の姿が見えてきた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3331)】

【月に3冊以上は本を読む読書好きが集う会 2024年5月25日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3331)

千葉・流山の史跡巡りに参加しました。田村哲三講師の説明で、西善院(写真1~4)、浄栄寺(写真5~9)、西栄寺(写真10~14)、天満宮(写真15~20)について理解を深めることができました。

閑話休題、短篇集『書庫の母』(辻井喬著、講談社)に収められている『書庫の母』は、推理小説ではないが、静謐で上品な謎解きの風合いを愉しむことができます。

「僕」は、育った家を売る必要が生じたため、20年前に亡くなった母の書庫の蔵書の整理に取りかかります。

「母は歌人だったから、歌集や短歌に関する評論などが多かったが、そればかりでなく、芸術論などに混って料理の手ほどきの本、植物や鳥、昆虫などの図鑑、家庭医学書、修養を説いた啓蒙書、宗教関係の解説書などがかなりあった。それらの全体が、終生勉強を続けた母の姿を現わしているようであった」。

一方、学歴のない叩き上げの父は、一代で中堅証券会社を作り上げた男でした。

20歳年上の父を亡くした母は、以降も歌人として生きたが、僕は母の蔵書の中に、同じ著者の十数冊の献本があることに気づきます。「年の頃は母と同じ世代である。僕の推測は、母とこれらの本の著者との間には、精神的に友情以上の共感のようなものがあったのではないかという方向に動いていった。私の父が元気な時でも、死んだ後でなら尚更、それぐらいのことはあってもいいはずだし、全くなかったとしたらその方が不自然だ」。

「(母が愛読した)吉井勇の歌集に沿って母の姿を追うと思い出すこともいくつかあり、意外に恋を恋する若やいだ女性の姿が浮かんできたりする」。

「『最初のひととずっと一緒にいられたら、それが一番幸せなのよ』と僕の妹を諭した時、母は鋭敏な自分の感性を恐いものを見る目で眺めて語っていたのだ。彼女にとって、我慢が限界を超える前に私の父が急死したのは、双方にとって幸せだったと言えるのではないか。母がそう意識していたとは思わないけれども」。

この「僕」が私自身だったら、どんな気持ちに襲われるか考えさせられてしまいました。