榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ブリュメール18日のクーデタを、ナポレオンの側からではなく、革命派の側から検証した意欲作・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3352)】

【読書の森 2024年6月15日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3352)

東京・杉並の阿佐谷を巡る散歩会に参加しました。大鷲(おおとり)神社(写真1)、民間信仰石塔(写真2~5)、アジサイ(10、11)などをカメラに収めました。幸運にも、ワカケホンセイインコ(写真12~19)の群れに出くわすことができました。ヤマモモの実を食べています。コイたちがなぜか一箇所に集まっています(写真20)。因みに、本日の歩数は17,464でした。

閑話休題、『ブリュメール18日――革命家たちの恐怖と欲望』(藤原翔太著、慶應義塾大学出版会)は、1799年のブリュメール18日のクーデタを権力欲に取り憑かれたナポレオン・ボナパルトの側からではなく、敢えて、ブリュメール派と呼ばれた革命家たちの側から検証した意欲作です。

因みに、カール・マルクスの『ルイ・ボナパルトのブリュメール18』は、ナポレオンの甥のルイ=ナポレオン・ボナパルトという卑小な人物が、なぜ独裁者になれたのかというテーマのもと、1851年12月2日のクーデタを考察しています。

ブリュメール派は、政治的には穏健共和派あるいは立憲君主政派に分類される人々で構成され、さまざまな経歴を持つ一方で、フランス革命により台頭し、絶対王政と革命独裁を敵視するという共通点を持っていました。

著者・藤原翔太は、ブリュメール18日のクーデタを、ブリュメール派がフランス革命の成果、すなわち自分たちが革命によって得たもの――地位と財産――を守るために、ナポレオンを担いで、権力の座に引き上げた事件と捉えています。革命期に生み出された民主主義を思いどおりに制御できなかった革命家たちが、まさに、その民主主義の中からナポレオン帝政という権威主義体制を誕生させてしまったというのです。

著者は、目先の利益のみに心を奪われて右往左往している現代人に、ブリュメール18日のクーデタを歴史的教訓として学んでもらいたいと願っています。

独創的な視点と実証的な内容が際立つ、読み応えのある一冊です。