榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

似鳥鶏の実験小説、恐るべし・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3378)】

【読書の森 2024年7月10日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3378)

カボチャ(写真1)が花と実を付けています。

閑話休題、短篇集『小説の小説』(似鳥鶏著、KADOKAWA)に収められている『無小説』には、茫然自失!!!!!!!

なぜならば、この小説は、「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」と、どこかで読んだような文章で始まるや否や、「わからなくなったからここで筆を置く。勝手なものである」と終わるまで、次から次へと怒濤の如く、夏目漱石の『坊っちゃん』、『草枕』、『夢十夜』、『こころ』、梶井基次郎の『檸檬』、『冬の日』、太宰治の『清貧譚』、『乞食学生』、『走れメロス』、『帰去来』、『禁酒の心』、『東京八景』、『女生徒』、『人間失格』、『グッド・バイ』、芥川龍之介の『羅生門』、『偸盗』、『首が落ちた話』、『売文問答』、堀辰雄の『大和路・信濃路』、『心の仕事を』、エドガー・アラン・ポーの『しめしあわせ』、『黒猫』、『モルグ街の殺人事件』、『アッシャー家の崩壊』、中里介山の『大菩薩峠』、坂口安吾の『復員殺人事件』、『不連続殺人事件』、『余はベンメイす』、『茶番に寄せて』、『作者の言分』、原民喜の『溺死・火事・スプーン』、大下宇陀児の『金魚は死んでいた』、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』、『オツベルと象』、ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』、江戸川乱歩の『心理試験』、『夢遊病者の死』、『二銭銅貨』、『孤島の鬼』、『鏡地獄』、『サーカスの怪人』、『鉄塔の怪人』、『夜光人間』、『青銅の魔人』、山本周五郎の『ひとごろし』、『泥棒と若殿』、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』、『地虫』、ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』、中島敦の『山月記』、牧野信一の『悪筆』、豊島与志雄の『死ね!』、小熊秀雄の『殴る』、夢野久作の『どろぼう猫』、下村千秋の『あたまでっかち』、グリム兄弟の『うまい商売』、山本宣治の『猿の演説』、モーリス・ルヴェルの『無駄骨』、三遊亭園朝の『吝嗇家』、森鴎外の『妄想』、小川未明の『作家としての問題』、岸田國士の『空地利用』、『もうひと息』、竹内浩三の『よく生きてきたと思う』、萩原朔太郎の『感謝』――からの引用だけで成り立っているからです。似鳥鶏本人の文章は一文字もありません。

似鳥鶏の実験小説、恐るべし。