榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

改憲反対派は、自民党改憲草案の3つのポイントをコピーして大量配布すべき・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3385)】

【月に3冊以上は本を読む読書好きが集う会 2024年7月19日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3385)

ショウリョウバッタ(写真1)、シオカラトンボの雄(写真2)、ジャノメチョウ(写真3)をカメラに収めました。東京・青梅に住む妹から、「この暑さに、タヌキの親子が昼寝をしていました。夕方になり、少し涼しくなったのか、山へ帰っていきました」というコメントと写真が送られてきました(写真4)。マンションの庭にタヌキが現れるとは、羨ましい限りです。

閑話休題、エッセイ集『凱風館日乗』(内田樹著、河出書房新社)で、思わず頷いてしまったのは、●加速主義と倍速で映画を観ること、●有権者の60%が棄権する社会、●改憲はしない――の3つです。

●加速主義と倍速で映画を観ること

「維新政治はもう15年以上も続いている。その間、大阪は経済が低迷し、人口が流出し、少子化が進み、コロナ対策で失敗し、都構想は二度否定され、万博・IR(統合型リゾート)は先行き不透明である。でも、大阪の有権者はあまり気にしていないようである。・・・(大阪の有権者たちは)このまま大阪が『終末』に向かって暴走する様子を砂被りで見ようとして固唾を呑んでいるというのがことの実相ではないのか。・・・世界がどういうふうに滅びるのか早く結果を知りたい。倍速で映画を観る人たちがそう望む気持ちが私にはわかる気がする。映画と違うのは、世界が滅びる時に、『早く世界が滅びるのを見たい』と願った人たちのほとんどが世界と運命を共にするだろうということである」。恐ろしや、恐ろしや。

●有権者の60%が棄権する社会

「(2023年4月9日に統一地方選の前半が終わった際)見逃せない変化があったと私は思う。それは約60%の有権者が棄権したということである。それだけの有権者が自分たちの代表を選ぶ権利を放棄したのである。『自分の立場を代弁してくれる候補者がいなかったから』と嘆く人もいるだろうし、『選挙では何も変わらない』と諦めている人もいるだろう。だが、忘れてはならないのは、棄権するというのは『政策決定が自分の関与しなところで行われても、私は別に構わない』と意思表示したということである。有権者の60%が現政権に『好きにやってくれ』と言ったのである。・・・おそらく棄権した人たちはこの政治がどこまで行くのか、その結果を早く見たいのだ。野党が議席を増やすとその勢いにブレーキがかかり、『エンドマーク』の出るのが遅くなる。それでは困る。『物語の結末』が早く知りたい。日本の『末路』を早く見届けたい。・・・たしかに『未来を早く知りたい』という焦燥感は私にも理解できる。だが、過去を振り返り、失敗から学習する習慣を失った人たちが明るい未来を切り開く可能性はない」。痛烈な皮肉が利いているぜ!

●改憲はしない

「『改憲をやるやる』と言うだけ言って、改憲派の支持層を固めておいて、それを選挙で利用するだけにして改憲には手を付けない方が政権維持には有利である。事実そうやって自民党は国政選挙で勝ち続けている。・・・(有権者を)利益誘導するなら、『改憲すると、みなさんにとってこんな<いいこと>があります』と約束する必要がある。だが、自民党改憲草案を見る限り、改憲して変わるのは、『戦争ができる国』になること、基本的人権が制限されること、緊急事態条項で合法的に独裁制に移行できることなどなどであり、改憲によって市民的自由が拡大したり、生活が豊かになったり、学校が楽しくなったり――ということは全く期待できない。・・・改憲しても『いいこと』は何も起きない。でも、戦後ひさしく『不磨の大典』であり、国民がそれを尊重し擁護する義務を負っていた憲法に向かって『こいつが<諸悪の根源>だったんだ』と言って、悪罵を浴びせ、足蹴にし、唾を吐きかけることならできる。『おい、みんな、それって、すごく気分がいいと思わないか?』。自民党が有権者に提供できるのは、そのような嗜虐的快感だけである」。改憲反対派が、この一節をコピーして大量配布すれば、選挙で勝てるかもしれませんね!