ユダヤ教徒が弾圧されたのは、キリスト教徒よりもペストに感染する人が少なかったから・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3513)】
黄葉したイチョウ(写真1、2)が落葉しています。
閑話休題、これまで知らなかったことを知る喜び、これまではできなかったことができるようになる嬉しさ――は、私にとって何より快感です。今回、『教養としての西洋哲学・思想――いっきに学び直す』(佐藤優・伊藤賢一著、朝日新聞出版)のおかげで、多くのことを知ることができました。
●ソフィストは対価を取る職業教師、哲学者は対価を取らない。
●プラトン、アリストテレス、マルクス、ヘーゲルは政治家になれなかったので、哲学者になった。
●アリストテレスは師のプラトンを馬鹿にしていた。
●ポリスの自由民には貴族と平民がいて、奴隷、女性、子供は自由民の外側にいた。
●井戸を造っただけのギリシアは市国家より大きくならなかったが、水道を造ったローマは帝国になった。治水を重視した中国も帝国になった。
●キリスト教徒よりもユダヤ教徒のほうが衛生面で厳しく清潔でペストに感染する人が少なかったため、「あいつらが毒をばらまいている」という流言が飛び交い、ユダヤ人の弾圧が起きた。ユダヤ人が猫を大切にしたことも、ペスト患者が少ないことに繋がった(猫が多いと鼠が減り、鼠が減ると蚤が減り、蚤が減るとペスト菌が減る)。
●ドイツの神学者エマヌエル=ヒルシュらが、イエスはユダヤ人でなくアーリア人だという説を唱えた。
●ロシアには、西欧で言うところの中世もなければ、ルネサンスも宗教改革もない。ロシア史は西洋史でも東洋史でもなく、ユーラシア史なのだ。
●パスカルの確率という考え方がなければ、チャットGPTもAIも生まれなかった。
●ルソーは欧米では人気がない。立派なことを言うくせに、自分の子供を孤児院に入れるなど実生活はめちゃくちゃで、そんな人間は信用できないというわけだ。特に、英米の経験論やプラグマティズムを重んじる国の人には評判が悪い。
●マルクスは貴族の家柄のイェニーと結婚し、間もなく移住したパリでエンゲルスと出会った。著しい浪費癖のあったマルクスは亡くなるまでエンゲルスから経済的支援を受け続けた。その暮らしぶりはブルジョア的であった。金を無心するエンゲルス宛ての手紙の中には、「私にプロレタリアートのような生活をさせるのか」といった文章まである。
●社会的階級で言えば、エンゲルスは文字どおりの資本家階級だ。エンゲルスに経済的に寄生していたマルクスも実質的には資本家階級だったのだ。
実に学びの多い、型破りな一冊です。