川上未映子、小川洋子、角田光代にとっての女性問題とは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3598)】
ほら、あそこに、と撮影助手(女房)が指差す先にシロハラ(写真1、2)が。ムクドリ(写真3)、メジロ(写真4)、サイハイラン(千葉県で絶滅危惧Ⅱ類。写真5)の茎と葉をカメラに収めました。ウメ(写真6~8)、コブクザクラ(写真9)、ジュウガツザクラ(写真10)が咲いています。サンシュユ(写真11)が咲き始めました。クロモジ(写真12)が冬芽を付けています。因みに、本日の歩数は13,234でした。
閑話休題、論文集『現代女性文学論』(新・フェミニズム批評の会編、翰林書房)で、とりわけ印象に残ったのは、●川上未映子の『夏物語』、●小川洋子の『妊娠カレンダー』、●角田光代の『八日目の蝉』――を論じた3篇です。
●『夏物語』――ケアとクィア、記憶・物語・産むこと(藤木直実著)
パートナーなしの妊娠・出産を目指す夏子を語り手とする長篇小説。登場人物の夏子、緑子、巻子などの命名は樋口一葉の『たけくらべ』に因んでいる。本作品の命題は、男性中心の異性愛社会の枠組みにおいて、男の性的欲望の対象となることを回避しながら妊娠することはできるか、という問いにある。夏子は、異性愛とは「べつのしかた」で、すなわち生殖医療の力を借りて、「子どものまま」で子どもを作ろうとする。
●『妊娠カレンダー』――妹の<目的のない悪意>(溝部優実子著)
姉の妊娠と出産を妹の視点で描いた作品。妹は、発癌性の疑いのある防カビ剤を使用したグレープフルーツのジャムを姉にどんどん食べさせることで、最後には姉のおなかの中の赤ん坊まで破壊させようとする。本作品のテーマは、著者の小川自身によれば、目的のない悪意、目的がない純粋な悪意、と述べている。女性の性が負わざるを得ぬ身体的な負性をシニカルに描き出している。
●『八日目の蝉』――新たな「母性」の向かうところ(西荘保著)
嬰児誘拐犯の女と誘拐された娘を軸に物語が展開していく。著者の角田は、少子化が進むのは女が悪いんだという社会風潮、産めない人、産みたくても産む環境にない人への無神経な雰囲気への憤りを表明している。また、母性は本能ではなく、「才能」のようなものではないかと述べている。本作品では、アダルト・チルドレンの問題提起もなされている。
これらの論文を読み終わって、女性は大変だな、女でなく男に生まれてよかったと、正直な感想を女房に漏らしたところ、今頃分かったのと睨まれてしまいました。あくまで、異性愛旺盛な男の世迷い言なのに。