最後のニホンオオカミが明治時代に捕獲された奈良・東吉野村で、わたしが出会った異様な獣の正体は・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3629)】
ヒバリ(写真1~4)をカメラに収めました。カワヅザクラ(写真5、6)にメジロ(写真6)たちが群がっています。ツバキカンザクラ(写真7、8)、マンサク(写真9、10)、アカマンサク(写真11)が咲いています。私の自然観察コースで見かけた、ドラマ撮影現場の城田憂を遠くからパチリ(写真12~14)。因みに、本日の歩数は14,490でした。
閑話休題、短篇集『藍を継ぐ海』(伊与原新著、新潮社)に収められている5篇はいずれも読み応えがあるが、私の心を鷲掴みにしたのは『狼犬ダイアリー』です。
ニホンオオカミの絶滅は私の一大関心テーマで、ニホンオオカミを見たと主張する登場人物の拓己君は、まさに、私の願望を具現化した存在だからです。
7年勤めたWeb制作会社を逃げ出して、奈良の山奥に移住してきた、仕事のないフリーのWebデザイナーの「わたし」まひろ(30歳)は、この東吉野村が、既に絶滅したと考えられているニホンオオカミが明治時代、最後に捕獲された場所とは知りませんでした。
わたしが、オオカミのものと思われる遠吠えを聞いた満月の夜の数日前に、大家の一人息子、小学3年生の拓己君が、集落の外れでオオカミを見たと言っていたのです。「そもそもオオカミのことなどろくに知らなかったし、さして興味もなかったのだ。そんな自分が、まさか本当にそれらしき声を耳にすることになるとは」。
わたぬき動物病院の獣医の綿貫先生は、ニホンオオカミについて、いろいろなことをわたしや拓己君に教えてくれます。「『秩父で1996年、九州の祖母山系で2000年にそれらしき動物が撮影されて、ニュースになったこともあります。ですが、数枚の写真で科学的に検証ができるかというと、やはり難しい』」。「『セント・バーナードからチワワまで、今の犬にはいろんな種類がありますが、すべてオオカミの子孫です。実際、タイリクオオカミと犬の遺伝子配列は、99.5パーセント以上が共通している。このギンタだって、立派なオオカミなんですよ』」。タイリクオオカミというのは全てのイヌの直接の祖先、ギンタというのは拓己君の家で飼われている勇敢な紀州犬です。
拓己君に誘われたわたしがギンタを連れて、拓己君がオオカミを見たという稲荷神社まで来た時、「ギンタが吠え立てるその先に、一頭の獣が姿を現した。・・・大きな口から出た長い舌のわきに、牙がのぞいている。そして、黄色い目。どこか異界から現れたような存在感がすでに、犬のものではない」。果たして、その正体は・・・。
ニホンオオカミを巡る臨場感溢れる謎解き物語と、自分は負け犬と落ち込んでいたわたしの再生物語とが見事に融合しています。