榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

仏教の多様化の歴史を俯瞰することができた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3716)】

【読書の森 2025年5月30日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3716)

サラサウツギ(写真1~3)、キンシバイ(写真4、5)、ビヨウヤナギ(写真6、7)、センジュギク(英名:メキシカン・マリーゴールド。写真8)が咲いています。

閑話休題、『なぜ仏教は多様化するのか――「教え」は「真理」の乗物にすぎない!』(平岡聡著、大法輪閣)の著者は、仏教はこれまで多様化してきたが、今後も多様化すべきと考えています。釈迦が創始した原始仏教(初期仏教)に最大の関心があり、多様化は釈迦の教えからの逸脱と考える私とは立場が異なるが、本書からは多くのことを学ぶことができました。

●釈迦在世時の仏教から教団が分裂するまでの仏教を初期仏教(原始仏教)と呼ぶ、

●釈迦死去後、100年(資料によっては200年)が経過すると、戒律の解釈を巡って教団が分裂してしまった。保守的な上座部と革新的な大衆部の2つの部派(グループ)である。教団が分裂した後の仏教を部派仏教(アビダルマ仏教)と呼ぶ。

●紀元前後に、新たな仏教、大乗仏教が誕生した。

●大乗仏教後期に、密教が誕生した。

●中国仏教
▶天台宗=智顗が開祖。その教えは最澄によって日本に伝えられた。
▶三輪宗=吉蔵が開祖。
▶法相宗(唯識宗)=玄奘の弟子・基が開祖。その教えは、日本では薬師寺、興福寺、清水寺に伝えられた。
▶四分律宗=道宣が開祖。この教えは、唐招提寺を創建した鑑真が日本に伝えた。
▶華厳宗=杜順が開祖。この教えは、日本では東大寺に伝えられた。
▶禅宗=菩提達磨が開祖。この教えは、日本では栄西、道元らに受け継がれていった。
▶密教=善無畏と不空が開祖。この教えは、不空の弟子・恵果に学んだ空海が日本に伝えた。
▶浄土教=慧遠が開祖。この教えは、日本では法然、親鸞らに受け継がれていった。

●初期仏教は、論理や合理(縁起・無常・無我など)による思考作用に基づくのではなく、修行によって体得できる直観に基づく宗教性に存在意義を有していた。「主体的に覚りを求め、実践に精進し、苦悩からの脱却という宗教性」を立脚点としていた。すなわち、苦からの解脱という修行こそが仏教の出発点であり、教理・思想はその副産物ということになる。