哲学の入門書の役割に徹した小気味よい一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3728)】
一日、雨。
閑話休題、『ビギナーズ 哲学』(デイヴ・ロビンソン著、ジュディ・グローヴズ絵、鬼澤忍監修、ちくま学芸文庫)は、初期ギリシャ哲学から現代哲学まで網羅しているが、あくまで入門書の役割に徹して、簡にして要を得た短い文に止めている、実に小気味よい一冊です。
例えば、私の好きな哲学者たちについては、こんなふうです。
●原子論者デモクリトス(前460~前370年)
ソクラテスと同時代の人で、物質についての推測的な見解でよく知られている。その見解は現代の原子物理学者の理論を驚くほど先取りしている。
●エピクロス(前341~前270年)
個人の幸福に必要なのは、心の静けさと安らぎだけだと述べた。デモクリトスを信奉するエピクロスは、死を恐れることはないと主張した。死とは、魂と肉体が原子(アトム)へと不可避的に溶解することだというのだ。
●唯名論者ピエール・アベラール(1079~1144年)
女弟子エロイーズと関係を持ち、それが原因で局部を切断された。エロイーズは女子修道院に入り、二人は残りの生涯を恋文を書き合って過ごした。アベラールは言葉の本性と世界について、「言葉はただの名前、すなわち『記号表現(シニフィアン)』に過ぎない――など、いくつかの挑発的な考え方を生み出した。
●オッカムのウィリアム(1285~1349年)
オッカムのウィリアムもまた唯名論者であり、多くの学問的な哲学は、架空の実体を巡る無駄口に過ぎないと指摘した。彼の考えによれば、偉大な真理は単純なのが普通だから、より単純な答えがあるのに複雑な答えを選ぶのは馬鹿げているというのだ。この原則は「オッカムの剃刀」として知られている。
●バールーフ・スピノザ(1632~1677年)
スピノザが著書『エチカ』で出した答えは、デカルトの二元論を論破するものだった。スピノザの「一元論」は、英独のロマン主義者に大いに影響を与えた汎神論(神はあらゆるものに宿る)と混同されてきた。
フッサール、ハイデッガー、ヴィトゲンシュタインと、まだまだ書きたいことがあるが、女房が、そろそろお風呂に入りなさい!と睨んでいるので、これにて失敬。