榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

動物たちの想定外の感覚世界には、本当に驚かされる・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3736)】

【読書の森 2025年6月18日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3736)

ネムノキ(写真1、2)、ノウゼンカズラ(写真3、4)、アメリカノウゼンカズラ(写真5、6)、ヒメヒオウギズイセン(写真7)が咲いています。マユミ(写真8)が実を付けています。ユーカリ(写真9)の葉が涼しげです。ニホンアカガエルの幼体(写真10)をカメラに収めました。撮影助手(女房)が、今夜のニホンヤモリ(写真11)は、いつものと違い、すごくちっちゃいわよ、との報告あり。

閑話休題、『動物には何が見え、聞こえ、感じられるのか――人間には感知できない驚異の環世界』(エド・ヨン著、久保尚子訳、柏書房)には、動物たちの想定外の感覚世界が次から次へと登場します。

かつて、生物学者ヤーコブ・フォン・ユクスキュルが「環世界」と呼んだ概念的世界の豊富な実例集と位置づけられる力作です。同時に、動物の感覚を研究する科学者たちの頑張りの記録集でもあります。

●チョウなどの昆虫は、物の表面に着地することで、足にある受容体で味を感じることができる。

●体表全体に味蕾が広がっているナマズは、「泳ぐ舌」である。

●クモヒトデは全身で一つの眼のように機能するが、その眼が働くのは昼間だけである。

●ガの一種であるベニスズメには、星明かりと同程度の薄暗さでも花の色が見えている。

●花の表面の模様やアンボンスズメダイの顔の縞柄など、自然界には紫外色が見える眼でしか見えない模様がたくさんある。

●ハダカデバネズミは、酸による痛みや、トウガラシの辛み成分であるカプサイシンによる痛みを感じない。

●ファイアチェイサービートルは山火事を見つけるために、吸血コウモリとガラガラヘビは獲物となる温血動物を追跡するために、温かい物体から放出される赤外線放射を感知する。

●ツノゼミは、足下の植物を伝わる振動を送ることによって、コミュニケーションを交わしている。彼らの振動の歌を人間が聞き取れる音に変換すると、鳥、サルの鳴き声や楽器の音に似ていることがある。

●キンカチョウは、仲間の歌声に含まれる、人間の耳では聞き取れないほど速くて細かい旋律の装飾に耳を傾けている。

●シロナガスクジラもアジアゾウも、低音域の超低周波の鳴き声によって長距離間でコミュニケーションを交わすことができる。今よりも静かだった時代には、クジラの鳴き声は海洋全体に伝わっていた可能性がある。

●マルハナバチは、花々の電場(生体バッテリー)を感知できる。

●サケ、ウミガメ、マンクスミズナギドリ(海鳥の一種)などは、成長後に生まれ故郷に戻ってこられるように、生まれ故郷の磁気特性を記憶の奥深くに刻み込む「刷り込み」ができる。

●タコの腕は部分的に独立している。中央脳から指令を受けることなく、世界を感知して探索することができるのだ。

――などなど、驚くことばかりです。

人間の3色型色覚とイヌの2色型色覚の違いを示すカラー写真は衝撃的です。

バード・ウォッチャーの私は、「人間の眼には、アオガラはどれも同じように見える。だが彼らの眼には、羽のUV(紫外)模様のおかげで、雄と雌はまったく違って見える。これは、ツバメやマネシツグミなど、私たちの眼には性別の見分けがつかないような鳴禽類の90%以上でも、同じである」という件(くだり)に、そうだったのかと大きく頷いてしまいました。