榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

何と、台湾にもデニソワ人がいた!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3872)】

【読書の森 2025年10月29日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3872)

セグロセキレイ(写真1)、ハネナガイナゴあるいはコバネイナゴ(写真2)、残念な角度だが、ウラギンシジミ(写真3)をカメラに収めました。ハナミズキとユリノキ(写真4)、ユリノキ(写真5)が紅葉・黄葉しています。イチョウ(写真6)が落葉しています。

閑話休題、「日経サイエンス2025年12月号」(日経サイエンス社)に掲載されている「古人類学 台湾にもいたデニソワ人――ごつい化石が語る独自の進化」(堀川晃菜著、蔦谷匠・澤藤りかい・海部陽介協力)を読んで、腰が抜けるほど驚嘆しました。ネアンデルタール人と近縁のデニソワ人の化石は、シベリアとチベットでしか発見されていなかったからです。

シベリアやチベットから遠く離れた台湾の澎湖諸島の海岸で見つかっていた「澎湖人」の化石が、遺伝情報を解析した研究チームによって、旧人のデニソワ人であると突き止めたと、2025年4月にScience誌で発表されたのです。下顎骨から古代タンパク質を抽出し、これまでに解析された人類化石の遺伝情報と比較して分かったのです。

このことから、デニソワ人はシベリアやチベットだけではなく、アジアの広範囲に分布していたのではないかと考えられています。デニソワ人の可能性が高い化石は、他にも複数あるとのことです。

私たち現代人のゲノムにはデニソワ人と交雑した痕跡が刻まれています。さらには、デニソワ人由来とされる興味深い遺伝子もあります。高地に適応するときに有利に働くとされるEPAS1遺伝子です。

もう一つ、本号で驚いた記事があります。「特集 縄文以前の人びと」の「縄文人の祖先を探る――3万年前より前にいたゴースト集団」(川村政彬著、渡部裕介・出穂雅実協力)がそれです。

集団ゲノム解析から得られた縄文人の集団史の推定結果を考古学と突き合わせることで、縄文時代以前の日本列島に暮らしていた集団について有力な仮説が見えてきたというのです。私たちと遺伝的な繋がりを持たない現生人類(ホモ・サピエンス)の集団が住んでいたというのです。彼らは3万年以上前に日本列島に到達し、1万年後に他の地域へと移動し、その子孫が今もどこかにいるかもしれないが、ゲノム解析から存在が示唆されるのに、古人骨が見つかっていないので、出穂雅実は、彼らを「ゴースト集団」と呼んでいるのです。