榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

会社は社員を幸せにするためにあるのだ・・・【薬剤師のための読書論(7)】

【薬局新聞 2013年6月26日号】 薬剤師のための読書論(7)

リストラなしの「年輪経営」――いい会社は「遠きをはかり」ゆっくり成長』(塚越寛著、光文社)は、異業種の経営者の手になるものだが、薬局・薬店の経営幹部にも多くのヒントを与えてくれると思う。

著者は、創業以来、48年連続増収・増益を達成した長野県伊那の寒天メーカー、伊那食品工業(非上場)の社長である。その独自な低成長志向の「年輪経営」は、広く注目を集め、大企業の幹部たちが続々と同社を訪れている。

著者は「年輪経営」について、「木は天候の悪い年でも、成長を止めません。年輪の幅は小さくなりますが、自分なりのスピードで成長していきます。『天候が悪いから成長は止めた』とは言いません。会社も一緒で、環境や人のせいにすることなく、自分でゆっくりでもいいから着実に成長していきたいものです」と述べている。

そのポイントは3つある。第1は、「『年輪経営』を志せば、会社は永続する」。急成長は敵だ。人の犠牲の上に立った利益は、利益ではない。安いからといって、安易に仕入れ先を変えるな。身の丈に合わない商売はするな。利益の源は独自の新製品で市場を創造し、シェアを高くすること。経営とはみんなのパワーを結集するゲームだ――と塚越節全開である。第2は、「『社員が幸せになる』会社づくり」。会社は社員を幸せにするためにある。社員が「前より幸せになった」と実感できることが成長である。小さな楽しみをつくって、社員のやる気をアップさせよ。社員の健康を守るための投資は惜しむな――と徹底している。第3は、「今できる小さなことから始める」。「遠きをはかり」、今すぐできることから始めよ。会社経営の要諦は「ファンづくり」にあり――というのだ。