ネルソン・マンデラの戦略的な行動指針に学ぶ・・・【薬剤師のための読書論(8)】
現代世界で最も尊敬できる人物、それは南アフリカのネルソン・マンデラである。マンデラについては、反アパルトヘイト(人種隔離政策)の闘士で、長年、獄中に繋がれ、出所してから、アパルトヘイト廃止後の初代大統領に選ばれたことぐらいしか知識がなかったので、もっと彼の考え方や行動を知りたくて手にしたのが、『信念に生きる――ネルソン・マンデラの行動哲学』(リチャード・ステンゲル著、グロービス経営大学院訳、英治出版)である。
この本を読んで驚いたことが、3つある。
第1は、マンデラが武骨一辺倒の闘士ではなく、非常に緻密な戦略家であること。「勇敢に見える行動をとれ」、「常に冷静沈着であれ」、「先陣を切れ」、「背後から指揮をとれ」、「役になりきれ」、「原理原則と戦術を区別せよ」、「相手の良い面を見出せ」、「己の敵を知れ」、「敵から目を離すな」、「しかるべきときにしかるべく『ノー』と言え」、「長期的な視野を持て」、「愛ですべてを包め」、「『負けて勝つ』勇気を持て」、「すべての角度からものを見よ」、「自分だけの畑を耕せ」――これらの行動指針は、我々ビジネスパースンにも役立つことばかりである。
第2は、27年間に亘る獄中生活が彼を大きく成長させたこと。「人格は厳しい状況の中でこそ計られる」という彼自身の言葉どおり、ひたすら人格を磨き、信念、志を持ち続け、人生の最終期に遂に夢を実現したのだ。
第3は、71歳で釈放された時に、これまで受けた恨みを晴らすことよりも、自分が目指す新しい国家建設に邁進したこと。人生の最も重要な時期を刑務所内で過ごすことを余儀なくされたというのに、報復や復讐といった気持ちを自らの努力によって排除し、「南アフリカにおける民主主義の実現と、人種間の調和」という夢のみを追求し続けたのだ。
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