アルツハイマー病患者とその家族に希望を与える書・・・【薬剤師のための読書論(29)】
『アルツハイマー病 真実と終焉――「認知症1150万人」時代の革命的治療プログラム』(デール・ブレデセン著、白澤卓二監修、山口茜訳、ソシム)は、アルツハイマー病を患っている人とその家族に希望を与える書である。
なぜなら、●現在、アルツハイマー病に投与されている薬剤が期待する効果を上げ得ていない理由、すなわち、アツルハイマー病というのは単一疾患ではなく、さまざまな原因が重なり合って発症する複合疾患、症候群であること、●原因別に3つのタイプの病態――①1型アルツハイマー病(炎症性)、②2型アルツハイマー病(萎縮性)、③3型アルツハイマー病(毒性)――に分けられること、●原因を取り除く、あるいは減らすことによって、症状が大きく改善すること、さらに、●アルツハイマー病予備軍の予防も可能であることが記されているからである。
著者は、アルツハイマー病の脳を、穴――異なるメカニズムを意味している――が36個開いた屋根に譬えている。
これまでアルツハイマー病の原因は、脳にアミロイドβと呼ばれる、べとついたタンパク質の塊が蓄積するためとされてきた。このアミロイド仮説に基づいて、アミロイドβを除去する薬剤の開発が進められてきた。ところが、著者らの研究によって、脳は、①炎症、②栄養不足、③毒素という3つの脅威に曝されると、それらに対する防御反応の一環としてアミロイドβを集積させて、脳自体を守っていることが明らかにされた。しかし、脳に対する脅威が強力で長期間続くと、本来は脳を守るためのアミロイドβ自体が過剰になってしまい、逆に脳神経を破壊するに至るということが解明されたのである。
この破壊的状況を正常化するには、アルツハイマー病の真の原因である3つの脅威を取り除くことから始めなくてはならないとして、予防法・治療法が詳細に解説されている。