榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

野心満々の人向けの「80対20の法則」の勧め・・・【あなたの人生が最高に輝く時(33)】

【ミクスOnline 2013年11月27日号】 あなたの人生が最高に輝く時(33)

80対20

「80対20の法則」を知っている人と、知らない人とでは、その後の人生に大きな差が出てしまうだろう。その意味で、『人生を変える80対20の法則』(リチャード・コッチ著、仁平和夫・高遠裕子訳、阪急コミュニケーションズ)は、野心を実現させたい人にとって必読の一冊である。

この著者は、綺麗事は一切言わずに、80対20の法則を活用して、人生における成功を勝ち取るコツを冷徹に示している。本書は、本来、企業の経営幹部に向けて書かれたものだが、組織だけでなく、個人でも、80対20の法則の重要性は変わらない。

単純は力なり

著者は、キーワードは「シンプル・イズ・ビューティフル」だと断言している。企業が複雑になれば採算が悪化するのに、利潤の最大化を追求するはずの企業が複雑になっていくのは、なぜか。「その答えは、管理職は複雑にするのが大好きだからである。話がこんがらがってくると、管理職は俄然、活き活きしてくる。細かいことに口出ししたり、形式だけの手続きを増やしたりと、管理職にとって面白い仕事がたくさんできるからだ。放っておくと、知らないうちにものごとがどんどん複雑になっていくことにお気づきの方もいるだろう。複雑化と管理職とは、疑いもなく、相互扶助の関係にある」と、容赦がない。

人生も同じように、放っておけばどんどん複雑になっていく傾向がある。どんな人でも、複雑になるほど無駄が増える。効率を高めるには、単純化するしかない。物事を単純化し、生産性が低い仕事、あるいはマイナスの価値しか生まない仕事は止めるべきというのだ。「単純化するには冷酷さが必要になる」。

核となる20%の顧客

大切な20%の顧客に的を絞りさえすれば、業績は必ず上昇する。重要な20%については、どんなに力を入れても、入れ過ぎということはない、時間でも、エネルギーでも、経費でも、惜しみなく注ぎ込んでいい。「そうすれば必ず大きな見返りがある」。

どんなに優秀な人でも、100%の顧客に注意を集中することなどできない。20%に力を集中することが主要任務になる。大切な20%の顧客の喜びを最大限に高めることが、業務の目的になる。20%に集中することの意義は、「80対20分析をやってみればすぐにわかることだが、売上高と営業マンの間には不均衡がある。大半の調査で、成績上位20%の営業マンが、売り上げの70%から80%を占めているという結果が出ている。80対20の法則が貫徹する範囲は想像以上に広い」。さらに、「80対20の法則は、人間だけでなく、時間にも適用できる。セールスマン一人ひとりの仕事をよく調べてみると、販売額の80%がセールス活動の20%の時間帯に集中していることが多い」。これは、私の長いMR活動の経験からも言えることだ。

著者は、「つねに80対20で考え、行動する」よう、強く勧めている。「80対20の法則は、われわれにレーダーと自動操縦装置を与えてくれる。レーダーがあれば、チャンスや危険をすばやく察知できるし、自動操縦装置があれば、大切な顧客の話を聞くために操縦席を立っても何の心配もない。何をしていても、つねに『80対20で考え』『80対20で行動する』――そのことさえしっかり頭に入れておけばいいのである」。すなわち、今後は発想を転換して、50対50思考を止めろというのだ。

具体的な方法

著者は、80対20の思考と行動について、具体的な方法を6つ挙げている。

「貴重な20%をみつけたら、駆け寄り、かき抱き、没頭し、自分のものとし、その専門家、崇拝者、伝道師、パートナー、産みの親になろう。それをできるだけ利用しよう」。

「貴重な20%をみつけだし、それを自分のものとし、最大限に利用するために、使える限りの資源――才能、資金、友人、取引関係、説得力、信用、組織力など――を惜しみなく注ぎ込もう」。

「他人の助けを借りるときは、ほんとうに有能な20%の人たちだけと手を組む。それができたら、さらに、ほんとうに価値ある20%のもの、ほんとうに有能な20%の人を探して、人脈を広げていく」。

「できる限り、80%の活動から20%の活動に資源を移していく。この裁定にはテコの作用が加わるため、得られる利益は予想以上に大きくなる。80対20の裁定取引の対象になるものは、主に2つある。人とカネである。人は、カネを生み出す資産である」。

「新しい20%の活動のイノベーションに取り組む。よそから貴重な20%のアイデアを盗んでくる。盗んでくるのは、ほかの人からでもいいし、よその会社の製品からでもいいし、ほかの業界からでもいい。学界の研究成果からでもいいし、よその国からでもいい。そして、そのアイデアを20%の活動に活かす」。

「80%の活動は情け容赦なく切り捨てる。時間でも、組織でも、取引関係でも、資産でも、何でもそうだ。無駄な80%にかかずらっていると、貴重な20%に費やすエネルギーと時間がなくなる」というのだ。

そして、「80対20の法則を軽んずる者は、『並』の人生で終わる。人に抜きんでた仕事をやってやろうという気概がない者は、80対20の法則を無視してもいい」と、何とも野心満々の過激な書である。