榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

私が目指した究極のビジネスパースン像・・・【あなたの人生が最高に輝く時(48)】

【ミクスOnline 2015年1月15日号】 あなたの人生が最高に輝く時(48)

究極のビジネスパースン像

「何としても実現させたい自分の夢がはっきりしていて、そのために何をなすべきかを知っている。考え方が常に前向き、意欲的で、決断力に富んでいる。同時に、合理的、科学的で、大局観を持ち、大きな構想を抱いている。何が重要で何が重要でないのか、何が緊急で何は後回しでよいのか的確に判断し、それに沿って仕事を進めていく。当面の目標に全力でぶつかり、うまくいかないときも簡単には諦めない。確信に満ちていて、いかなる困難な場面でも弱音を吐かない。他人に依存せず、自力で道を切り開いていく。大胆に、そして細心の注意を払ってことに臨み、仕事の進行状況や部下の仕事ぶりを適切にフォロー・アップする。仕事の成果は部下や関係者に公平に配分する。組織の枠にとらわれず活動範囲を積極的に拡大するが、限度をわきまえている。上司、先輩、同僚に礼は尽くすが、必要を超えたお世辞は言わない。敵と戦う術を知っており、うまく難局を切り抜けていく。そして、敵からさえも一目置かれるようになっている。仮に失敗しても、それに挫けることなく、また、いつまでもこだわることなく、すぐに立ち上がって挑戦を再開する。失敗から教訓を学び、次の成功への糧とする」。

これは、28年間、使い続けてきたシステム手帳・ファイロファクスの「人生の目標」というページに書き写してある、『実力――自力・他力で自分を創る』(ラルフ・G・H・シュウ著、井上富雄訳、三笠書房。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)の巻末の井上富雄による解説の一節である。これこそ、私が目指すべき究極のビジネスパースン像だと雷に打たれたような衝撃を受けた私は、これまで何度、この文章を読み返したことだろうか。

私のファイロファクス

因みに、私のファイロファクスは、「人生の目標」「反省すべきこと」「褒められて嬉しかったこと、貶されて嫌だったこと」「仕事のアイディア・営業のアイディア」「榎戸版現代用語の基礎知識」「心に響く文章表現」「読みたい本のリスト」「ダイアリー(日程管理)」などのページで構成されている。

できる人物の条件

出典は忘れてしまったが、「できる人物 7つの条件」も、私の「人生の目標」であった。「(1)挑戦する志を持った人物であること、(2)発想はポジティヴに、そして根明タイプの人物であること、(3)失敗に挫けず、物事に一喜一憂しない人物であること、(4)過去に囚われず、前向きの姿勢で事に当たることのできる人物であること、(5)協力してくれるブレインなり友人を数多く持った人物であること、(6)自らの夢を形にする頑固さと不断の努力を欠かさない人物であること、(7)事業に溺れず、金にあくせくせず、全てが己の勉強と思うことのできる人物であること」。

コミュニケーションの秘訣

「人生の目標」のページには、「コミュニケーションを絶やさないための秘訣」も書き写してある。「それは、『医師・薬剤師のメンターを目指せ!』である。メンターとは『成功支援者』などと訳されるが、簡単に言えば、『顧客を出世させるために、あらゆる方面から支援する』ということである。顧客が目指しているもの、顧客が望んでいる将来の姿というものを把握しておくことが必要である。顧客の『今』だけを考えてコミュニケーションを取ると、相手には、プロダクト・アウトの態度と受け取られてしまう。顧客の将来の利益に自分の時間と情報を先行投資し、顧客が成功した暁に『配当』を受け取れるようになることが望ましい。いずれにしても、顧客の未来に焦点を当てて話すことは、円滑なコミュニケーションを築くのに大いに役立つ」。実際に試してみたが、この顧客の将来に焦点を当てたコミュニケーションは、効果抜群であった。

悪口を言われたら

数十年前の元旦の朝日新聞に掲載されたサトウサンペイの「フジ三太郎」という4コマ漫画も貼り付けている。「<修行>ことしはドコまで」と題された漫画の1コマ目――(他人から)悪口言われる (三太郎は猛烈に)言い返す。2コマ目――(他人から)悪口言われる (三太郎はじっと)忍耐する。3コマ目――(他人から)悪口言われる (三太郎は)ナントモ思わなくなる。4コマ目――(他人から)悪口言われる (三太郎は手を合わせ、相手の)健康を祈ってあげる――という内容だ。当時、1コマ目状態だった私は、この漫画から大いなる刺激を受けて、2コマ目、3コマ目、そして、できれば4コマ目まで人間のスケールを大きくしたいと願い、それなりに努力を続けてきたのであるが、情けないことに、まだ4コマ目の境地には遠く達していない。

目に映るのは、なぜ?

「人生の目標」のページには、ずっと以前に朝日新聞の読者投稿欄「いわせてもらお」に掲載された「目に映る」という投稿作品も貼ってある。「『お母さんの目にボクが映るのは、なぜ?』と3歳の息子。『好きな人が映るのよ』と言うと、彼はいろんな人の目をのぞきこんでは満足しています。――福岡市・いつまでもこのままでいて・36歳」。折に触れて読み返しては、癒やされている。咄嗟に、こういう素敵な答えができる母親に育てられた幸せな息子は、きっと素晴らしい人間に成長したことだろう。

このファイロファクスは、私にとって命の次に大切なものなので、最初のページに、「お願い!!――この手帳は私にとって非常に大切なものです。拾われた方は、お手数ですが、下記にご連絡ください。お礼(5万円)を差し上げます」と書いている。幸いなことに、まだ拾われたことがないので、5万円を提供したことはまだない。