榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ごく少数の支配者と多数の農奴が生きる世界になるという衝撃的な予測・・・【MRのための読書論(157)】

【ミクスOnline 2019年1月21日号】 MRのための読書論(157)

GAFA

                            
どの業種の人間であろうと、今や、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社の動向を気にせずに企業戦略を立案するのは困難な時代を迎えている。この意味で、『GAFA(ガーファ)――the four 四騎士が創り変えた世界』(スコット・ギャロウェイ著、渡会圭子訳、東洋経済新報社)は、誠に時宜を得た一冊ということができる。この4社、GAFAに精通している著者の舌鋒は鋭く、GAFAの正体を白日の下に晒している。

グーグル

「私たちがグーグルに置く信頼には並ぶものがない。グーグルが現代の神と呼ばれる理由の1つは、グーグルが私たちの心の奥底にある秘密を知っているからだ。質問することによって私たちはグーグルに、母親、親友、医師にさえ話さないことを告白する。・・・私たちはこのメカニズムに絶大な信頼を寄せている。グーグルは検索結果について、どれがオーガニック(広告の影響を受けない)でどれが広告かを明確に示すことで、神に近い姿を維持している。広告とは切り離されているように見えるために、オーガニック検索の信頼が増幅しているのだ。グーグルは2つのやり方を採用している。オーガニック検索は中立性を維持し、有料コンテンツでは広告料を取れるようにした。これで文句を言う人は誰もいない」。

グーグルが攻めてくるのは、私たちの「脳」である。「(グーグルは)脳に話しかけ、それを補足し、長期記憶をほぼ無限のレベルにまで増幅させる。それを可能にするのは、ペタバイト(テラバイトの1000倍)規模の世界中の情報へのアクセスである。しかしそれだけでなく同じくらい重要なことがある。グーグルが私たちの脳の複雑で無二の検索『エンジン』(そして脳のニューロンをすばらしいスピードで伝わっていく能力)の代わりをしているということだ」。グーグルを使えば、世界中のサーバーを駆け巡って、今、必要な情報を1秒もかからずに見つけることができるのだ。

アップル

「(スティーブ・)ジョブズは他の経営者が理解していなかったことを理解していた。コンテンツや日用品でさえオンラインで販売される時代に、電子機器のハードウェアを高級なぜいたく品として売るにはどうすればいいか。そう、他のぜいたく品と同じように売ればいいのだ。・・・アップルは『製品の価格は高く、生産コストは低く』を実現した」。

アップルが攻めてくるのは、私たちの「性器」である。「アップルはあなたのほうがライバルよりも優れて見えますよ、というメッセージを伝えているのだ。エレガントで頭がよく、金持ちで情熱的だ。あなたは完璧だ。クールできちんとしていて、ポケットの中で音楽を聴き、プロ並みだが実はスマホで写した旅先の写真をスワイプしていく。きっと現世で最高の人生を送れるだろう」。アップルは、性的な魅力を手に入れたいという私たちの生殖本能に訴えてくるのだ。

フェイスブック

「フェイスブックは(人類の4分の1に当たる)20億の人々と意義深い関係を持っている。同社は最速でユーザー1億人を超えた5つのプラットフォームのうち3つを所有している。フェイスブック、ワッツアップ、そしてインスタグラムだ。・・・愛は親密さと深さ、そして他者との相互関係から生じる。フェイスブックは、うまく使えば人間関係を築くことと育むことの両方に役立つ手段となる。それは誰もが感じているはずだ。20年来会っていない人を見つけたり、引っ越したあとも友人と連絡を取り合ったりすると、心が満たされるのを感じる。友人が生まれたばかりの赤ん坊の写真を投稿していると、それを見た自分はいい気分になる。ドーパミンが分泌されるのだ」。

フェイスブックが攻めてくるのは、私たちの「心」である。「心は合理的ではないかもしれない。しかし心をターゲットにするのは、まともで抜け目ないきわめて合理的な戦略だ」。私たちの行動データを無料で手に入れ、それを活用して広告料を稼ぐという巧みなシステムが、フェイスブックという巨大な怪物の屋台骨を支えているのだ。

アマゾン

「我々はものに強く惹かれる性質を持っている。ものはどうしても必要だ。暖かくして安全を守ってくれるもの。食料を貯蔵したり加工したりするためのもの。異性を惹きつけたり、子どもを世話したりするのに役立つもの。そしていちばんいいのは仕事を楽にしてくれるものだ。エネルギー消費を減らし、節約した時間でもっと重要なことができる。・・・小売企業がアマゾン・ゴーに苦しめられる。同様にコンピュータ・メーカー、そしてまもなくあらゆるブランドが、アマゾン・エコーによって苦しめられることになるだろう」。

アマゾンが攻めてくるのは、私たちの「狩猟採集本能」である。「顧客が(アマソンから)得られるものは大きい。そしてアマゾンが得るものはもっと大きい。消費者からの絶大な信頼をもとに、アマゾンは彼らの会話を聞き、消費者データを集めることができる。それによってアマゾンは他の企業よりも、顧客の私生活や消費者の願望のさらに奥深くを知ることができる」。

8つの遺伝子

GAFAに共通する遺伝子が挙げられている。①商品の差別化、②ビジョンへの投資、③世界展開、④好感度、⑤垂直統合、⑥AI、⓻キャリアの箔づけになる。⑧地の利――の8つである。

これからの世界

GAFAは、神、愛情、セックス、消費の具現者であり、何十億人もの人々の毎日の生活の価値を高めている。しかし、GAFAは、巨額の富を投資家と才能に満ち溢れたごく少数の労働者にもたらした。一方、その他の労働者の多くは取り残された。このかつてないほどの規模の人材と金融資本の集中は、どこに行き着くのだろうか。GAFAが目指すもの、それは詰まるところ金儲けなのだ。この調子だと、ごく少数の支配者と多数の農奴が生きる世界にならざるを得ない――という、著者の衝撃的な予測が示されている。