榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

音を立てて崩れゆく戦後民主主義を傍観するな・・・【情熱的読書人間のないしょ話(207)】

【amazon 『安倍首相の「歴史観」を問う』 カスタマーレビュー 2015年10月26日】 情熱的読書人間のないしょ話(207)

散策中に、運よく、ダイサギをかなりの近距離からカメラに収めることができました。飛び交わすコサギのペアの写真も撮れました。高い枝に止まるアオサギも見つけることができました。秋の日差しが降り注ぐ川辺では、ベンチに座った年配の女性がのんびりと語り合っています。因みに、本日の歩数は14,016でした。

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閑話休題、『安倍政権の「歴史観」を問う』(保阪正康著、講談社)は、興味深い、かつ重要な指摘が目白押しです。

安倍政権の本質を鋭く摘出しています。「安倍首相の答弁や言い分は、昭和10年代の陸軍の軍事指導部の幕僚たちが、たとえば国家総動員法の審議のときに見せたような開き直り、在留邦人の保護や石油資源の供給が不安定な状態から脱するための自存自衛といった語を連発した構図とほとんど同じである。つまり相手の言い分など知ったことでなく、常に自らの意見を声高に主張し、それに国会議員がヤジをあびせると、軍人が『黙れ!』とどなったのとまったく同じなのである」。「私は、安倍首相の答弁の枠組みは、この時代(昭和10年代)の軍事指導者たちの体質と幾つかの点(『形容句』『立論不足』『耳学問』)で類似していると思う。・・・決して非礼の意味で書くのではないが、もしかすると安倍首相は、現代にあって、背広ではなく軍服を着て安保条約関連法案の答弁にあたり、内閣による憲法解釈を進めていると表現できるのではないか。このような構図で見たときに、安倍首相の答弁はよく理解できるし、軍事主導体制へ切りかえていく心理もそれなりに説得力をもってくる」。

「安倍内閣のやっていることが次々と通ったら、次の内閣もまた、同じやり方でひっくり返す。また次の内閣も自由にやるということになりかねない。立憲主義なんて知ったこっちゃない、なんでもやれるということなんです」。立憲主義の危機という認識が必要だというのです。

戦争指導者の子供は戦場に行かないと告発しています。「安倍首相が強行した集団的自衛権とは何か。つまりは兵隊が戦場へ行くということです。自衛隊の人が行って死ぬこともありうるでしょう。そういう想像力をもたなければならない。私は、この国の軍事化を進めている政治家にかつて聞いたことがあります。『軍事化を進めるときは、実際に死ぬかもしれない自衛隊員のことも考えるべきじゃないですか』と。そうしたら、『自衛隊の人は、みんな誓約書を入れて入隊している。命令されれば、どこにでも行くってことになってますから、大丈夫です』と答えた。そんなことよく言うなと思いましたね。・・・『地球の裏側へ行くのも厭わない』と集団的自衛権を進めているある政治家は言いました。ある官僚も言いました。しかし、彼等の子供たちは決して行かないでしょう。なぜか? 自分たちの息子は行かないようなシステムをつくるからです。・・・太平洋戦争を調べるとわかるけれど、行くのはいつも庶民たちです」。

著者は政治家としての田中角栄を高く評価しています。「これは有名な話ですが、田中角栄が1972年に国交回復を求めて北京を訪れ、毛沢東と会いました。田中角栄は言いました。『ご迷惑をおかけしました。日本軍国主義はひどいことをしました』。毛沢東はこう答えた。『そんなことはない。恩人ですよ、あなたの国の軍人は。あなたの国の軍人がわれわれの国に入ってきたから、われわれの国がひとつになった。そして共産党と国民党が合体して、日本軍国主義を追い出して、われわれが勝ったのです』。もちろんここには皮肉とかいろんな意味があります。しかし、一面の真理を突いている。もし日本の軍隊が入って行かなければ、共産党は国民党の力を凌駕するほどの力を持ちえなかった。ですから毛沢東の言うことは当たっているんです」。

「一言で説明すれば、田中角栄は私たちの欲望を政策化した人です。私たちは、美味しい物を食べたい、便利な生活をしたい、様々な欲求をもっていますね。それを政策化したのが田中角栄です」。

角栄の失脚を謀ったのはアメリカだと明言しています。「田中角栄のロッキード事件については資料は全部出てきているとは言えないけれど、やはりアメリカの国際戦略の中で異質な行為をしている。それがアメリカによる田中排除の理由になっていくわけですね。これは中曽根康弘が書いている中に出てきますから読んでおくといいですが、田中を逮捕したのは間違いだったとキッシンジャーが言っている。明らかに政治的な逮捕だったと認めたわけですね。コーチャンというアメリカ側の証人を日本では免責とするという形で裁いたわけですから(中曽根は『自省録』の中で、『キッシンジャーとハワイで会った時に、彼は『ロッキード事件は間違いだった』と密かに私に言ったことがあります』と書いている)」。

『昭和天皇実録』に関して興味深いことが書かれています。「昭和天皇は人物への評価をあからさまに口にはしないが、それでも陸軍の山下奉文、石原莞爾の人事(昇格)についてこれほどまでに拒絶反応を示しているとは知られていなかった。参謀総長の閑院宮載仁に昇格の説明を求めているのを見ても、満州事変の石原、二・二六事件の山下を許してはいない」。

政権べったりの言論人が目立つ中で、本書は崇高な輝きを放っています。