榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

編集の面白さ、奥深さ、大変さが縦横無尽に語られている本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(396)】

【amazon 『圏外編集者』 カスタマーレビュー 2016年5月27日】 情熱的読書人間のないしょ話(396)

私の書斎には、関羽の小さな額が掛かっています。印象深かった中国旅行を思い出す縁(よすが)となっています。

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閑話休題、私は予て編集という仕事に興味・憧憬を抱いています。『圏外編集者』(都築響一語り、朝日出版社)では、これまで私が手にしたことのない分野の雑誌や書籍の編集に長年携わってきた著者の、編集への熱い思いが縦横無尽に語られています。

●毎月の振り込みよりも、毎日のドキドキのほうが大切だから。そして編集者でいることの数少ない幸せは、出身校も経歴も肩書も年齢もまったく関係ない、好奇心と体力と人間性だけが結果に結びつく、めったにない仕事ということにあるのだから。

●けっきょく、編集を学ぶヒントがどこかにあるとしたら、それは好きな本を見つけてじっくり読み込むことしかないと思う。・・・編集者だって好きな本や雑誌と出会って、それを真似して作ってみることから始めたらいい。著者が好きな本でもいいし、編集やデザインや、造本が好きというのだっていい。あとは、1冊でも多く自分で本を作ることのほうが大事だ。

●編集者を目指すからって、ひとよりたくさん本を読む必要なんてない。それよりもはるかに大切なのは、100回読み返せる本を、何冊か持つこと。

●そもそも「編集者」とはどんなことをするのか。ざっくり言うと、編集者の仕事は企画を考えて、取材したり作家に執筆してもらったりして、本や雑誌を組み立てること。なかでもいちばん重要な役割は、著者が創作以外のことを考えなくていいようにすることだと僕は思う。作家をプロデュースなんて、とんでもない。編集者の仕事は、あくまでスムーズに本が生まれるための交通整理。

●やりたいことがあって、それに向かってがんばるのはポジティブな苦労だから、そんなにつらくない。ストレスって、やりたくないのにやらなくちゃいけないという、こころの負担だから。――全く、同感です、

●編集者という仕事の醍醐味は、取材に行って、新しいもの、新しいひとを自分で見つけること。それ以外にない。だから自分の足で歩きながら新しいものを発見し続けたい。歩いていられるうちは、ずっと。

個人的にそうかと思ったのは、この件(くだり)です。「印刷物とちがって、ウェブというメディアはパソコンだけで読まれるとはかぎらない。タブレットで読むひとも、スマホで読むひともいる。小さな画面で読まれることも多いから、文章も改行を多くしたほうが読みやすい」。私のように好んで長い文章を書く人間は、どうすればいいのでしょう(笑)。

対象とする分野は異なっていても、編集という作業には多くの共通点があること、編集の面白さ、奥深さ、大変さを再認識した私。