榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本会議の運動の進め方、そして、その陰の真の実力者・・・【情熱的読書人間のないしょ話(621)】

【amazon 『日本会議の研究』 カスタマーレビュー 2016年12月22日】 情熱的読書人間のないしょ話(621)

千葉・流山の流山おおたかの森駅前の広場に臨時のアイス・スケートのリンクが開設されています。因みに、本日の歩数は10,851でした。

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閑話休題、『日本会議の研究』(菅野完著、扶桑社新書)には、日本の民主主義を何としても守りたいという著者の熱い思いが籠もっています。

本書から、実に多くのことを教えられました。

「本書執筆時点で直近の衆議院選挙である第47回衆議院総選挙(2014年12月14日施行)では、確かに、自民・公明の連立与党が、議席配分としては圧倒的な勝利を収めた。しかし、得票率を見ると自公連立政権=49.54%、野党・無所属合計=50.46%と、わずかとはいえ、野党の得票率が上回っている。・・・社会全体として右傾化したとは言い難いにもかかわらず、政権担当者周辺と路上の跳ねっ返りどもだけが、急速に右傾化している・・・。これはなんとも不思議だ」。この得票率の実態は、私の思い込みを覆すもので、おかげで希望の灯が灯りました。

「当初は、『巨大組織・日本会議』というイメージを私も抱いていた。しかし、事実を積み重ねていけば、自ずと、日本会議の小ささ・弱さが目につくようになった。活動資金が潤沢なわけでも、財界に強力なスポンサーがいるわけでもない。ほんの一握りの人々が有象無象の集団を束ね上げているにすぎない」。私たちは日本会議という民間の保守団体を過大に評価し過ぎていたのです。

「しかしながら、その規模と影響力を維持してきた人々の長年の熱意は、特筆に値するだろう。70年安保の時代に淵源を持つ、安東巖、椛島有三、衛藤晟一、百地章、高橋史朗、伊藤哲夫といった、『一群の人々』は、あの時代から休むことなく運動を続け、さまざまな挫折や失敗を乗り越え、今、安倍政権を支えながら、悲願達成に王手をかけた。この間、彼らは、どんな左翼・リベラル陣営よりお頻繁にデモを行い、勉強会を開催し、陳情活動を行い、署名集めをしてきた。彼らこそ、市民運動が嘲笑の対象とさえなった80年代以降の日本において、めげずに、愚直に、市民運動の王道を歩んできた人々だ。その地道な市民活動が今、『改憲』という結実を迎えようとしている。彼らが奉じる改憲プランは、『緊急事態条項』しかり『家族保護条項』しかり、おおよそ民主的とも近代的とも呼べる代物ではない。むしろ本音には『明治憲法復元』を隠した、古色蒼然たるものだ。しかし彼らの手法は間違いなく、民主的だ」。民主的な方法で、非民主的な目標を達成しようとしているとの著者の指摘には、目から鱗が落ちました。

日本会議の理論的支柱となっている「成長の家」教団を束ねる陰の真の実力者として、安東巖にスポットを当てていることに、著者の並々ならぬ取材力が窺えます。「安東巖こそが、『(成長の家の創始者)谷口雅春なきあとも、彼らの情熱を支え続ける存在』『運動全体を見渡す立場にいる人物』と目するほかないのである」。「安東巖の類稀なる、策士・運動家・オルガナイザー・名演説家としての実績と、彼個人の人格的魅力、そして、『谷口雅春との個人的紐帯』に裏付けられた権威。これでは、安東巖には誰も逆らえないだろう」。