榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

シャーロック・ホームズのガイドブックとして、文句なしの決定版・・・【情熱的読書人間のないしょ話(673)】

【amazon 『シャーロック・ホームズ 完全ナビ』 カスタマーレビュー 2017年2月16日】 情熱的読書人間のないしょ話(673)

ジンチョウゲが赤紫色の蕾をたくさん付けています。ハクモクレンの白いビロードのような芽が陽に輝いています。因みに本日の歩数は15,389でした。

閑話休題、『シャーロック・ホームズ 完全ナビ』(ダニエル・スミス著、日暮雅通訳、国書刊行会)を手にして、若い時分、シャーロック・ホームズものに夢中になって、あれこれ読み耽ったことを懐かしく思い出しました。

本書は、コナン・ドイルが書いた長篇4作と短篇56作の概要が、ネタバレは避けつつ巧みに紹介されているので、これからホームズものを読もうという者にも、かなり読み込んできた者にも、最高のガイドブックと言えるでしょう。さらに、書籍のみならず、映像についての解説も充実を期すという念の入れようです。

興味深いことに、ホームズのモデルとして、ドイルがエディンバラ大学の医療研修時に師事した臨床外科教授、ジョゼフ・ベルが挙げられています。ドイル自身が恩師に向けてこう書いています。「シャーロック・ホームズが存在するのは、間違いなく先生のおかげです・・・彼が行う分析作業は、先生が外来棟でもたらした効果を、いささかも誇張したものではありません」。

ドイルが敬意を持って、先達、エドガー・アラン・ポーを「史上最高に独創的な短篇小説家」と評しているのには、好感が持てます。

一方、推理小説作家としてドイルの後輩に当たるアガサ・クリスティは、ある作品の中でエルキュール・ポワロに、「アーサー・コナン・ドイル卿にわたしは敬意を表す。シャーロック・ホームズのこれらの物語は実際は不自然だし、欺瞞に満ちてもおり、すこぶる技巧的な構成になっている。しかし、その手法の芸術性――その点を考えると、ぜんぜんちがってくる。言葉の与えてくれる愉しみ、ことにあのワトスン医師というすばらしい人物の創造。あれはまさに大成功だよ」と語らせています。

ホームズものが成功を収めた要因はいろいろありますが、優秀だが、欠点のあるホームズと、控えめながら頼りになる、思いやりのあるワトスンという組み合わせが大きく貢献しているという指摘には、誰も異論がないでしょう。

若い時に、こういう書に出会っていたらと思うのは、望蜀の嘆だと言われるでしょうね。
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