榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

原作とは印象が異なるヴィスコンティの『郵便配達は二度ベルを鳴らす』・・・【情熱的読書人間のないしょ話(678)】

【amazon DVD『郵便配達は二度ベルを鳴らす』 カスタマーレビュー 2017年2月22日】 情熱的読書人間のないしょ話(678)

散策中に、ヒマラヤユキノシタが桃色の花を咲かせているのを見かけました。ウメも未だ未だ頑張っています。ナツミカンの実が地上にたくさん転がっています。因みに、本日の歩数は10,193でした。

閑話休題、ルキノ・ヴィスコンティの1942年の映画『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(DVD『郵便配達は二度ベルを鳴らす』<ルキノ・ヴィスコンティ監督、マッシモ・ジロッティ、クララ・カラマイ出演、ゴマブックス>)は、ネオ・リアリズムの原点とされる作品ですが、原作の『郵便配達はいつも二度ベルを鳴らす』(ジェイムズ・M・ケイン著、小鷹信光訳、ハヤカワ・ミステリ文庫。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)とは、受ける印象がかなり異なります。

原作は愛欲に溺れる無法者たちの顛末をハード・ボイルド風に描いた「渇いた」小説ですが、原作からインスピレーションを得たヴィスコンティは、これを切ない愛の情念に身を焦がす男女の「湿った」作品に作り変えています。

許されぬ状況の中で悶える二人。その愛し、愛されたいという渇望が鮮烈に描かれた本作品を見たあなたは、不倫から夫の殺害に至るこの男女を一刀両断に切り捨てることができるでしょうか。

私たちに許される最高の贅沢は、先ず、ケインの原作で渇いた文体を楽しみ、次に、1981年のボブ・ラフェルソンの映画『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(DVD『郵便配達は二度ベルを鳴らす』<ボブ・ラフェルソン監督、ジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラング出演、ワーナー・ホーム・ビデオ)でヒロイン役のジェシカ・ラングの強烈なエロティシズムに噎せ、最後に、ヴィスコンティの『郵便配達は二度ベルを鳴らす』で愛の情念に思いを馳せることでしょう。