榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

カレドニアガラスは多種の道具を作るだけでなく、フック付きの道具も作る・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1112)】

【amazon 『道具を使うカラスの物語』 カスタマーレビュー 2018年5月8日】 情熱的読書人間のないしょ話(1112)

①ここ数年、イソヒヨドリの美しい姿を見たい、美声を聴きたいと、出没するという何個所かを何度も訪れたが、悉く失敗、②野鳥撮影の天才少年、小学5年生のK.M.から教えてもらった場所に向けて、我がイソヒヨドリ観察隊(といっても助手の女房と、私の2名)が勇躍、出発、③幸先よく、浄水場のタンクのフェンスに止まっている灰褐色のイソヒヨドリの雌を発見、④ピーピョロピッピッリーッという澄んだ囀りを頼りに進み、漸く、街灯上の雄を発見、⑤突然、幸運にも、その雄が我々のすぐ近くの街灯上へと急接近、⑥スーパーの駐車場に移動した雄の後を追うも、姿が見えず、諦めかけたその時、助手が指差した3m先に雄を発見――青灰色と赤褐色のツートン・カラーの全身の撮影に成功、遂に長年の夢が叶いました。気がついたら、2時間半が経っていました。帰り道に咲いていたキンランが、よかったねとねぎらってくれました。なお、イソヒヨドリと呼ばれていますが、ヒヨドリよりもツグミに近縁の鳥です。因みに、本日の歩数は10,932でした。

閑話休題、『道具を使うカラスの物語――生物界随一の頭脳をもつ鳥 カレドニアガラス』(パメラ・S・ターナー著、杉田昭栄監訳、須部宗生訳、緑書房)には、思わず唸ってしまいました。というのは、カレドニアガラスは、同じような試験を受けた人間の6~7歳の子供の7割が解決できなかった問題を見事に解いてしまったからです。

現在、知られている動物種は約1,371,500、道具使用が観察された動物は284種、道具作成または修正が観察された動物は42種、多種の道具を作ることが知られている動物は人間・チンパンジー・オランウータン・オマキザル・カレドニアガラスの5種、フック付きの道具を作ることが知られている動物は人間とカレドニアガラスの2種だというのです。

「カレドニアガラスは、小枝、葉柄、乾燥した草、とげのあるつる、タコノキの葉など、様々な素材から道具を創り出します。飼育下では、ときに彼らは捨てられた段ボール紙や自らの抜け落ちた羽を使うことがあります」。

「カレドニアガラスは、股状の枝を折ったり形を加工したりすることで、フック付きの道具を作ります」。

「カラスたちはフックの先を鋭くするために『削ります』」。

「タコノキ製の段付きの道具を作るためには、カラスはタコノキの葉のどの部分をどのように裂いたらいいのか、その法則を学ばなくてはなりません」。

「一部のカレドニアガラスは多くの種類の道具を使用しますが、どのカラスたちにも、ほぼいつも使っている自分好みのタイプの道具があるようです」。

「科学者たちは、人間、チンパンジー、イルカ、カラスなどの強固な社会生活が彼らの大きくて複雑な脳の進化を駆り立てたと考えています(この考えは社会的知性仮説と呼ばれます)。エサを見つけるという難題もおそらく知能の進化に関係があるでしょう。科学者の中には、より多くの種類のエサを食べ、それらのエサにありつくために一生懸命努力しなければならない種の方が、より大きな脳を進化させる傾向があると考えている者もいます(この考えが技術知性仮説です)」。

「哺乳類では、複雑な思考は脳のしわ状の表面である新皮質で行われます。鳥類ではこの新皮質がないので、科学者たちは、鳥たちは考えることはせず、ほぼ本能に頼っていると考えてきました。しかし脳のでき方は一つとは限りません。科学者たちには、現在では鳥の脳の別の部分(外套)が哺乳類の新皮質に似た働きをすることがわかっています。鳥の脳は原始的どころか、単に仕組みが異なるだけなのです」。

読み終わった時、カレドニアガラスに対する親愛の情が湧いてきました。