榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

動物の眼の進化と、現存している動物たちの眼について学べる一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1324)】

【amazon 『動物が見ている世界と進化』 カスタマーレビュー 2018年12月5日】 情熱的読書人間のないしょ話(1324)

東京・中央の聖路加国際大学の聖ルカ礼拝堂のステンドグラスは、静かに輝いています。ヒヨドリの若鳥が盛んに鳴いています。因みに、本日の歩数は13,087でした。

閑話休題、『動物が見ている世界と進化』(スティーヴ・パーカー著、蟻川謙太郎監修、的場知之訳、エクスナレッジ)は、動物の眼の進化と、現存している動物たちの眼について、分かり易く解説されています。

とりわけ興味深いのは、進化についての部分です。

「英国の博物学者チャールズ・ダーウィンは、画期的な著作『種の起源』(1859年)で自然淘汰による進化の理論を打ち立てたが、眼の進化はとりわけ難題だと認めていたようで、以下のように述べている。『異なる距離に焦点を合わせ、さまざまな光量に対応し、球面収差や色収差も補整するための巧妙な仕掛けを備えた眼が自然淘汰によって形成されたという想定は、率直に言ってしまうと、この上なく非常識なことに思える』。だが、彼はそのすぐ後で次のように考察している。『しかし仮に、完璧で複雑な眼からきわめて不完全で単純な眼まで数え切れないほどの細かい段階が存在し、どの段階でもその所有者にとっては有用な器官であることが証明できるとすればどうだろう。・・・そうだとしたら、完璧で複雑な眼が自然淘汰の作用によって形成されると信じることは、想像しがたい点はあるにしても、それほど非現実的なこととは思えない。これは理性的な判断なのだ』」。

「進化は、自然淘汰のメカニズムによって起こるランダムなプロセスだ。生物自身が変化しようと意識的に決断するわけではない。個体群のなかの個々の生物に、遺伝子の変化による変異が生じる(遺伝子は、生物がどのように発達し、その生命プロセスがどのように機能するかが、デオキシリボ核酸すなわちDNAの形で書かれた説明書だ)。いかなる変異であれ、ある時と場所において有利なもの、つまり生存と繁殖に役立つものは残っていく。変異は遺伝的、すなわち継承されるものなので、子孫に受け継がれる。これが、絶え間なくリアルタイムで進行する適応のプロセスだ。時には子孫にさらに新たな変異が生じ、その変異が環境によりよく適応していたり、さらなる優位をもたらすならば、またしても自然淘汰によって選ばれる。これがずっと続いていくのだ」。

「だが、環境条件は変わる。温暖化や寒冷化といった気候変動。新たな食料、競争相手、捕食者の進化。病気の流行と終息。これ以外にも多くの変動要因が、適応と生存に影響を与える。ある時と場所では有利だった形質(特徴)は、ほかの場所や将来にはもはや役立たずになるかもしれない。こうした原理は、歯、爪、四肢、筋力、消化能力、さまざまな行動といった特徴にあてはまる。もちろん、眼も例外ではない」。

眼の進化の4段階が詳しく解説されています。第1段階では、簡単な眼点、すなわち光受容体が形成されます。第2段階では、眼点が窪み、カップ、穴が形成されます。第3段階では、カップや穴が小さく狭くなります。第4段階では、カップに焦点を調節するレンズが加わります。「こうして詳細で高解像度な視覚が完成する。たくさんの動物たちが、採食、繁殖、競争、捕食者回避、過酷な環境の回避といった生きていくうえでの試練を乗りきるため、このような高度な視覚を活用している」。

かなり学術的な内容だが、私たちも理解し易いように、図や写真を援用するなど、さまざまな工夫が凝らされています。